カテゴリー別アーカイブ: 医療

nat032

遠隔画像診断した疾患;炎症性偽腫瘍 (inflammatory pseudotumor)

  • 1953年に Pack GTにより第一の報告があった。
  • Inflammatory pseudotumor can be defined as a localized mass consisting of a fibrous stroma, chronic inflammatory infiltrates with a predominance of plasma cells, and an absence of anaplasia, which mimic malignant disease by their gross appearance.
  • Inflammatory pseudotumors of the liver tend to be large, solitary masses, but multiple tumors have been found
  • Occlusive phlebitis of relatively large portal vein has been reported in some cases
  • Results of tissue culture or specific stain were negative for microorganisms in most instances

症状

  • 熱、心窩部痛、嘔吐、全身倦怠、体重減少。
  • 炎症性偽腫瘍が胆管を侵す場合、黄疸は発現する可能性がある。

血液検査

  • 白血球増加症と赤血球沈降速度の亢進。
  • 肝機能検査の結果は正常またはわずかに上昇する可能性がある。
  • 腫瘍マーカーは常に陰性で、鑑別診断にとって重要である。

CT所見

  • fibrous stromaの割合によって異なるが、delayed enhancementされることがある。

MRI所見

  • 腫瘍内部の凝固壊死により、間実質とT2WIで等信号のことが多いが、炎症の程度により高信号に描出されることもある。

The history of primary malignant tumors and the absence of fibrotic septum or linear appearance within the mass and the most of lesions were hyperintense on T2WI could help the differentiation.

World J Gastroentero,2001;7(3):422-424

nat025

病理の画像を貼りあわせたりするのに、Microsoft ICEが便利ですよ。

Microsoft ICE(Microsoft Image Composite Editor)は、Microsoft Research(マイクロソフトの研究部門)が開発したソフトです。なので、急に開発が止まったりする危険性が低いと思いますし、Quolityも高いソフトです。
入局した頃から使っているので、10年近くちゃんと更新されています。(もっと以前からあったと思います)
どんなソフトかというと、パノラマ写真を簡単に作成できます。貼りあわせたい複数の写真をドラッグ&ドロップするだけで、つなぎ目のない写真が作れます。まぁ、これだと、あんまり関係ないかなと興味がわかない人が多いと思いますが、自分がよく使っていたのが病理の取り込んだ写真を貼り合わせるのに使っていました。

弱拡のレンズで変えてとればいいのですが、自分の大学では第一病理と第二病理が有り、弱拡のレンズは第二病理にしかなかったのです。僕が出入りしていたのは第一病理だったので、若干行くのが億劫だったのです。行けばすぐ貸してくれるのですけどね。
学会でも、たまに、自分で頑張って張り合わせたんだろうなという絵を出されてる先生がいます。
このソフトを使えば自動的にかつ、コントラストも合わせてくれますので、本当に繋ぎ目がわからないほどの出来栄えになります。
radiologic-pathologic-collerationするならば入れておいて損はないと思います。freeですしね。
最新バージョンは動画もあわせられるみたいですが、必要がないようであれば前のバージョンを入れたほうが安定しているかもしれません。

Microsoft Visual C++ 2010 ランタイムライブラリというものを入れないといけないのですが、詳しい手順はMicrosoftICEで検索すれば解説しているページがあるので、そこを参照してください

nat030

ユーザーの「視線」が入力装置になる。

「自分が画面のどこを見ているか」をコンピュータが読み取り、それを「入力」として扱う技術が出てきています。
技術を開発したのは,Tobii Technology(以下,Tobii)という企業で,本社は同国首都ストックホルムにあり,東京にも現地法人を持っています。

ユーザーの視線が画面のどこを見ているのかを探知する技術は、Web業界では以前から注目されてきていたそうで、ユーザーが便利に使える=利用頻度が上がる可能性があるWebページを構築するには、ユーザーが画面のどこに注目していて、画面が切り替わったときには、まずどこに注目するのか、これを細かく分析することは、大きな意味を持つかららしいです。
視線を追う「アイトラッキング」技術と、それにくわえPCをコントロールする「アイコントロール」技術も実際に使える段階にまでなってきたという感じなのでしょうか。

読影をしている時に、見逃しと言われるものがあります。
大きく3つのパターンが有ると思われます。本当に見ていないのと、見たけど所見として認識できない。何らかの所見は認識したがそれが病的ではないと判断し結果間違える。という状況です。
後者2つは経験の浅い人に多いのではないでしょうか。ベテランにはあまり見られない気がします。
誰にでも起こっているのが前者でしょうか。
もし、レポートも書き終わったし、次の症例へ、、、なんて時に、見ていない部分に色がついて確認ダイアログが出たりするようにできれば、だいぶ減るのでしょうか。

アイコントロールは清潔時のPCの操作や、精度次第ですが、通常の読影中でも威力を発揮しそうです。
例えば、マウスカーソルがあるところをアクティブにする。なんて機能が多くのビューアーにあると思われますが、これを見ているところを〜にかえるだけでも、かなり便利です。
キー画像に→入れるのも簡単にできそうです。

新しい入力装置はいろいろありますが、これはかなり期待できるのではないでしょうか。

nat025

遠隔画像診断した疾患;CO中毒(carbon monoxide poisoning)

  • 一酸化炭素は無色・無臭のガスである。
  • 1時間程度の暴露では、600~700ppmから酸素不足による症状が出始め、1000ppm以上になると重篤な症状が現れ、1500ppm以上では生命に危険が及ぶ。
  • 中毒学的薬理作用としては、一酸化炭素は酸素よりも約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすいため、一酸化炭素ヘモグロビンを形成し、オキシヘモグロビンの形成を妨げる。また、オキシヘモグロビンの解離曲線を左方移動させ、オキシヘモグロビンによる組織への酸素供給も阻害する。つまりは、組織での酸素不足による臓器障害が病態の主体である。
  • さらに、ミオグロビンと結合することにより、心機能を低下させ、低酸素状態をより悪化させる。加えて、ミトコンドリアなどのチトクローム酵素と結合して組織呼吸自体も障害する。
  • 低酸素に対して感受性の高い中枢神経、心筋が特に障害を受けやすいが、全身が低酸素の障害を受ける。

診断

  • 血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度の測定によってなされる。CO-Oximeterや吸光度測定法によって測定できる。

症状

  • 急性期の症状といったん意識が完全に回復した後、一週間前後してから見られる、見当識障害や錐体外路症状などの多彩な神経症状を示すことがある(遅延型)。
  • 急性一酸化炭素中毒に引き続き、遅延型白質脳症が起こる頻度は低く、0.06% ~2.8%と報告されている(2.3)。中年以降の患者に見られることが多い(3)。
  • 遅延性白質脳症の病因はいまだ明らかでない。
  • 白質病変の重症度は、一酸化炭素暴露の程度、一酸化炭素ヘモグロビン濃度、アシドーシスと相関しない(4)
  • 単純に低酸素血症による障害だけでなく、一酸化炭素のミトコンドリアなどのチトクローム酵素と結合することによる直接的な細胞障害効果の関与している可能性を示唆される(5)。
  • 痴呆、失調症、パーキンソン症候群、歩行障害と無言(2)。
  • 最も遅延型白質脳症に特徴的なのは大脳白質の脱髄及び、壊死であり、臨床症状との相関関係が認められている(6)。

一酸化炭素に関連した白質病変は3群に分類。(もちろん、オーバーラップする)

  • 第1群は、半卵円中心と半球間交連で複数の小さい壊死性病巣を認めるもの。
  • 第2群は、脳室周囲の深部白質に広く認められるもの。組織学的には軸索の障害と多数の炎症細胞が見られる。
  • 第3群は、深部白質での脱髄であり、前頭葉に見られることが多い。脳梁、内包に見られることもある。皮質下U繊維は比較的保たれることが多い(6.9)。
  • 上記の病理学的所見を反映して、CTにおいては白質に低吸収域が見られ(7)、MRIにおいてはT2強調画像で白質に高信号が見られる(10.11)。

画像所見のまとめ

  • 脳室周囲白質と半卵円中心で両側性対称性の瀰漫的な異常信号。しばしば脳梁、内包、外包に達する。
  • 皮質下U繊維は保たれる傾向がある。
  • 淡蒼球壊死は必ずしもみられるわけではない。また両側性である必要はない、片側性の場合もある(13)。
  • 視床と被殻にT2協調運動画像で低信号を認める。:これは非ヘム鉄の軸索輸送の中断が白質病変によって引き起こされ、基底核と視床で鉄の沈着が沈着するためと考えられている(15)同じような病変が多発性硬化症や脳梗塞の患者で報告されている(14.16)。

治療

  • すみやかに100%酸素投与を開始して、一刻も早くCOを洗い出し、組織低酸素状態の時間を短縮することである。
  • 高圧酸素療法は昏睡、痙攣、その他神経学的所見、心筋虚血をきたしている重症患者、妊婦の場合は考慮されるが、準備にかかる時間を考慮すると100%酸素投与が現実的。

予後

  • CO中毒による遅延性白質脳症の予後は、比較的良好である。
  • 75%は1年以内で回復する。しかし、一部には持続性の後遺症がみられる(2)。

References

1.Medical toxicology-diagnosis and treatment of human poisoning Elsevier,1988

2.Choi IS. Delayed neurologic sequelae in carbon monoxide intoxication. Arch Neurol 1983; 40:433-435.

3.LeeMH. Clinical studiesondelayed sequelae of carbon monoxide intoxication. J Korean Neuropsychiatr Assoc 1978; 15:374-385.

4.OkedaR,FunataN,TakanoT,etal. The pathogenesis of carbon monoxide encephalopathy in the acute phase: physiological and morphological correlation. Acta Neuropathol 1981; 54:1-10.

5.Ginsberg MD. Delayed neurological deterioration following hypoxia. In: Davis JN,Rowland LP, eds. Cerebral hypoxia and its consequences. New York: Raven, 1979; 21-44.

6.LapresleJ,Fardeau M. Thecentral nervous system and carbon monoxide poisoning. II. Anatomical study of brain lesions following intoxication with carbon monoxide (22 cases). Prog Brain Res 1967; 24:31-75.

7.Kobayashi K, Isaki K, Fukutani Y, et al.CT findings of the interval form of carbon monoxide poisoning compared with neuropathological findings. Eur Neurol 1984;23:34-43.

8.Kim KS,WeinbergPE,SuhJH,HoSU.Acute carbon monoxide poisoning: computed tomography of the brain. AJNR 1980; 1 :399-402.

9.Ginsberg MD, Myers RE, McDonagh BF.Experimental carbon monoxide encephalopathy in the primate. II. Clinical aspects,neuropathology, and physiologic correlation. Arch Neurol 1974; 30:209-216.

10.HorowitzAL,Kaplan R,SarpelG. Carbon monoxide toxicity: MR imaging in the brain. Radiology 1987; 162:787-788.

11.Tuchman RF,MoserFG,MosheSL. Carbon monoxide poisoning: bilateral lesions in the thalamus on MR imaging of the brain. Pediatr Radiol 1990; 20:478-479.

12.Preziosi TJ, Lindenberg R, Levy D, Christenson M. An experimental investigation in animals of the functional and morphologic effects of single and repeated exposures to high and low concentrations of carbon monoxide. Ann NY Acad Sci 1970;174:369-384.

13.TaylorR,Holgate RC. Carbon monoxide poisoning: asymmetric and unilateral changes on CT. AJNR 1988; 9:975-977.

14.Drayer B, Burger P, Hurwitz B, Dawson D,Cain J. Reduced signal intensity on MR images of thalamus and putamen in multiple sclerosis: increased iron content? AJNR 1987; 8:413-419.

15.Dietrich RB,Bradley WGJr. Ironaccumulation in the basal ganglia following severe ischemic-anoxic insults in children. Radiology 1988; 168:203-206.

16.Cross PA,AtlasSW,Grossman RI. MR evaluation of brain iron in children with cerebral infarction. AJNR 1990; ll:341-348.

nat032

遠隔画像診断した疾患;CADASIL (Cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy )

一般事項

  • 1970年代から、主に大脳白質を含む遺伝脳血管障害に関するいくつかのヨーロッパの症例報告が、表示された。
  • Tournier-Lasserve らはこれらの障害を染色体19と関連づけて、1993年に頭文字をとってCADASILを提唱した。
  • 1996年に彼らNotch3遺伝子の突然変異によって引き起こされることを証明した。

Nishio et al. reported the first Japanese case of CADASIL in an autopsied patient in 1997.

症状

  • 30歳代 前兆を伴う片頭痛
  • 40歳代 虚血イベント(一過性脳虚血発作または脳卒中)。繰り返すischemic episodesは、歩行障害、尿失禁、仮性球麻痺、認知障害と痴呆につながる。
  • 60歳代 死亡

病理

  • CADASIL is characterized by the deposition of smudged periodic acid-Schiff (PAS)-positive granules known as granular osmiophilic materials (GOM) in the media of small arteries and arterioles.
  • The medial smooth muscle cells are completely lost, and intense adventitial fibrosis is present.
  • Neuropathology Foci of cystic softening in the cerebral white matter, corpus callosum, internal capsule, basal ganglia, thalamus, and brainstem are evident. The centrum semiovale shows diffuse myelin loss but the subcortical U-fibers are preserved.
  • They found that luminal occlusions were scarce.
  • The remaining smooth muscle cells exhibited balloon-cell changes .
  • The medullary arteries appeared to transform into an earthen-pipe state.
  • 小さい動脈性変化は脳髄質および軟髄膜の動脈において顕著である。そして、大脳で多発融合性の広汎性虚血性変化に至る。

診断

  • few GOM can be identified in the arterioles of the peripheral nerves, sketal muscles, and skin using EM.
  • molecular diagnosis is possible by looking for mutations in the Notch3 gene. A skin biopsy, examined using EM, was reported to have a sensitivity of 45% and a specificity of 100%.Markus HS et al. Neurology 2002; 59: 1134–1138
  • The immunohistochemical detection of GOM deposition in biopsied skin specimens using the anti-Notch3 antibody is reported to be highly sensitive (96%) and specific (100%).

Joutel A et al. Lancet 2001; 358: 2049–2051.

MRI所見

  • 20-30歳 
  • characteristic hyperintense lesions 前側頭葉(100%[5/5 ] )
  • subcortical lacunar lesions (SLLs)(20%[1/5])
  • 31-40歳
  • lacunar infarct (75%[3/4])
  • characteristic hyperintense lesions 外包、基底神経節、脳幹
  • 41-50歳
  • microbleeds(19%[3/16])
  • 50年より年をとった患者
  • characteristic hyperintense lesions(100%[15/15])
  • subcortical lacunar lesions (SLLs)(73%[11/15])
  • lacunar infarct(93%[14/15])
  • microbleeds(47%[7/15])

van den Boom R et al. Radiology. 2003 ;229(3):683-90.

Subcortical lacunar lesions (SLLs)

  • SLLsは、CADASILに特有であるとされる。
  • gray matter-white matter junctionの皮質下にあって、すべてのパルス系列で脳脊髄液と同一の信号強度を持ったlinearly arranged groups of rounded circumscribed lesionsと定義されている。
  • gray matter-white matter junctionでの、貫通動脈の拡張型血管周囲腔の存在と周囲脳実質の海綿状態のよる。

van den Boom R et al. Radiology. 2003 ;229(3):683-90.

被殻外側部の高信号病変も、CADASILに特徴的である。

O’Sullivan M et al. Neurology 2001; 56:628–634.

  • 40歳以上のCADASILを有する患者のうち高い有病率(94%)を有する。

被殻外側部T2WI高信号病変を示す鑑別疾患

  • CADASIL
  • Wilson 病
  • 多系統萎縮症Parkinson型(MSA-P)
  • PRES

治療

  • No specific treatment is available.
  • 抗血小板剤は、進行を遅らせ、脳卒中を予防するかもしれない。
  • 経口避妊薬は使用するべきではない(特に前兆を伴う片頭痛を伴っている場合)
  • 高コレステロール血症と高血圧は治療するべき。
  • ホモシステイン濃度が上昇するので、葉酸の投与が推奨される。
  • 微小出血のリスク増加するので、脳卒中の発症の際にtPAを投与するべきでない。
  • ワルファリンは投与するべきではない。
  • 頭痛症状の改善のために、L-Arginine(天然に存在するアミノ酸)が有効な例があった。
  • Ariceptは、CADASIL患者で機能を改善することが示された。

The Lancet Neurology Early Online Publication, 22 Febuary 2008