月別アーカイブ: 2014年3月

遠隔画像診断した症例:腸脛靭帯炎、腸脛靭帯摩擦症候群、ランナー膝、ランナーズニー(iliotibial band friction syndrome)

症状

  • 膝外側の違和感や痛み
    →走っている時、走り終えた時、患部を指で押した時など
  • 痛みが発生するタイミングは、足が曲がった状態から伸ばした時
  • Overuse syndromeの一つ

腸脛靭帯とは?

  • 大腿筋膜張筋 (tensor fasciae latae) の一部
    股関節の屈曲、 外転、 内旋、膝関節の伸展、 外旋 に関与
  • 大腿筋膜張筋は上前腸骨棘に起始し、腸脛靱帯を介し大腿の外側面を下方へと走行しながら脛骨粗面の外側のGerdy結節 (ジェルデイ結節) に停止する。

病態

腸脛靭帯は、膝を伸ばした時は大腿骨の前方に、曲げた時は後方に移動。この際に大腿骨外顆にこすられ発症する

診断

触診で診断されることが多いが、MRIが施行された場合は同部位に脂肪抑制T2WIで高信号を認める

画像診断した疾患:分枝粥腫型梗塞(Branch atheromatous disease:BAD)

臨床的脳梗塞分類

  • 心原性塞栓症
  • 動脈原性微小塞栓 artery-to-artery embolism
  • アテローム血栓性梗塞
  • 境界領域梗塞 borderzone infarct
  • ラクナ梗塞
  • 分枝粥腫型梗塞 branch-atheromatous disease (BAD)

Branch atheromatous disease(BAD)の総論

  • 1989 年にCaplan により提唱
  • BAD の診断基準は、2006年に高木が提唱。①画像検査上の梗塞巣の形状(テント上の外側線条体動脈領域梗塞では、梗塞像が水平断で3スライス以上に及ぶもの。テント下である傍正中橋動脈領域梗塞では、梗塞像が橋腹側に接しているもの。)②病側主幹動脈の高度狭窄(50%以上)または閉塞や心房細動のないこと。の2条件が基本
  • BAD 病理に基づくもので MRI 画像で穿通枝入口部閉塞と診断されたものが BAD タイプの梗塞
  • ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞の中間となる病態。
  • 外側線条体動脈、傍正中橋動脈が好発部位。
  • 本邦において諸外国より頻度が高い
  • 発症後しばしば症状(特に片麻痺)が進行し治療抵抗性となることが多い。
  • 分枝粥腫型梗塞は親動脈(主幹部から皮質枝)に生じたアテローム血栓性粥腫が、穿通枝分岐部から起始部レベルに高度狭窄ないしは閉塞をきたし、深部穿通枝支配領域の広範囲(中枢側から末梢まで)に病変をきたす
  • 親動脈のアテローム血栓性プラークによる深部穿通枝分岐部の閉塞、親動脈から深部穿通枝起始部にかかるjunctional plaque、深部穿通枝近位側に生じる微小粥腫(microatheroma) が原因
  • ラクナ梗塞と比較して両側の範囲が大きく穿通枝の走行、支配領域に一致して長軸方向に進展する。
  • 同一領域の複数の穿通校に閉塞をきたすこともある
  • 入院時に比較して入院後に神経症状が増悪することがしばしばみられるので、症状が比較的軽微で改善傾向を示すラクナ便塞とはきちんと鑑別する必要がある

Branch atheromatous disease(BAD)とラクナ梗塞

  • 穿通枝とは脳内主幹動脈から分岐した細い動脈であり、その閉塞によって生じるのが穿通枝梗塞
  • 穿通枝梗塞としてはラクナ梗塞が広く知られており、単一の深部穿通枝の閉塞による脳梗塞と定義。主に高血圧症を背景因子として、穿通枝の脂肪硝子変性(lipohyalinosis)による閉塞が原因。CT、MRIでは直径 1.5cm 以下の小さな梗
  • 近年、穿通枝梗塞に症状が進行しやすい Branch atheromatous disease(BAD)
    と言われる一群があり注目。
  • BAD の 発 症 機 序 と し て は、 穿 通 枝 が 主 幹 動 脈 か ら の 入 口 部 で 微 小 ア テ ロ ー ム 斑(microatheroma) により狭窄あるいは閉塞することによって生じる、画像上は長径1.5cm 以上の梗塞。
  • 分枝粥腫型梗塞 BAD:糖尿病、高脂血症。 起始部のアテローム硬化性変化→プラーク形成
  • ラクナ梗塞 Lacune:高血圧。 末梢のlipohyalinosisによる閉塞

Branch atheromatous disease(BAD)の治療

  • 治療法はその発生機序からアテローム血栓性梗塞に準じる 。
  • 抗凝固薬、抗血小板薬、脳保護薬の多剤併用療法が有用とする報告が散見されるが、現状ではその進行を抑制する治療法は確立されておらず、また急性期では死亡や重篤な後遺症を残存することは少ないものの、その機能予後は必ずしも良好ではない

Branch atheromatous disease(BAD)の画像診断

  • 梗塞巣は深部穿通枝の走行に沿って長軸方向に進展
  • 外側線条体動脈や視床膝状体動脈のBADでは側脳室体部上衣下まで梗塞が進展することがある
  • 深部穿通枝は起始部では動脈幹を形成し、末梢側で複数に分岐するので、血管長軸に直交する軸位断面でも、 高血圧性のラクナ梗塞よりも病変面積は大きい
  • 梗塞は1つの深部穿通校領域に限局する
  • 複数の深部穿通枝領域に広範囲に生じるものはBADではなく、中大脳動脈M1が一過性に塞栓性に閉塞して生じる梗塞
  • 傍正中動脈や短回旋枝のBADでは軸位像で、橋腹側を底部とする3角形状の最終梗塞を呈する
  • ほとんどの症例では原因となる粥腫を検出することはできない
  • 脳底動脈では傍正中動脈や短回旋枝起始部に限局性の壁肥厚、粥腫を検出できることがある

遠隔画像診断した疾患:副腎癌(adrenocortical carcinom)

副腎癌の一般的知識

  • 副腎は皮質と髄質よりなる
  • 副腎皮質癌は極めて稀で機能性腫瘍と、非機能性腫瘍がある
  • 100万人に2人程度と非常に稀ながん
  • 副腎髄質癌は、褐色細胞腫が悪性化したもの。悪性褐色細胞腫と呼ばれる
  • 二峰性の年齢分布を呈し10歳までと40歳代に多い
  • 90%で副腎皮質ホルモン産生過剰がみられ、50%の症例で症候性
  • 腺腫と比較して複数のホルモン過剰症状が認められることが多い
  • Cushing症候群に加えて男性化症状あるいは女性化症状が認められる
  • 小児では約8割の症例においてアンドロゲン産生による男性化を呈する
  • ホルモン異常を伴わない癌は、自覚症状が現れにくいので、発見されたときには
    大きな腫瘤を形成していることが多い(平均12- 15cm)
  • 副腎腺癌は巨大児、臍ヘルニア、巨舌を三徴とするBeckwith-Wiedemann症候群に合併する内臓悪性腫瘍のーつとしても知られる
  • 副腎偶発腫瘍のうち、悪性腫瘍の頻度は、腫瘍径 4cm 以下で 2%、4~6cm で 6%、6cm 以上で 25%。
  • 分化度の高い腫瘍は腺腫と同様に単純CTで低吸収値を示しうる
  • 典型的には内部に出血、壊死が著明であることが多い
  • 大きな病変では辺縁は不整で、肝・腎などの周囲臓器への浸潤を伴うこともある
  • 腫瘍栓を形成し、腎静脈や下大静脈内に進展する(鑑別となる他の腫瘍でも見られることがある)
  • 傍大動脈領域のリンパ節に転移を呈することが多い
  • 石灰化は約30%に見られる
  • 片側性
  • 20%の症例では発見時に転移がある
  • MRIでは内部の出血と壊死を反映して、T1強調像、T2強調像ともに不均一な高信号
  • アドステロールシンチグラフィは転移病巣の検出には有用だが良悪性の鑑別には寄与しない
  • FDG-PETでは、副腎皮質は代謝が活発で、良性腺腫でも取り込みが認められるため、良悪性の鑑別には必ずしも寄与しない
  • 非機能性の場合には転移に代表される他の副腎の悪性腫瘍との鑑別が問題

3/5に「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(平成26年厚生労働省告示第56号)等が公布されました

平成26年4月1日より適用されることとなりました。

当社のみならず、遠隔画像診断を行っている人たちが気になっているのは

第4部 画像診断

<通則>
5 画像診断管理加算
画像診断管理加算1は、専ら画像診断を担当する医師(地方厚生(支)局長に届け出た、専
ら画像診断を担当した経験を10年以上有するもの又は当該療養について、関係学会から示されている2年以上の所定の研修を修了し、その旨が登録されている医師に限る。)が読影及び診断を行い、その結果を文書により当該専ら画像診断を担当する医師の属する保険医療機関において当該患者の診療を担当する医師に報告した場合に、月の最初の診断の日に算定する。

画像診断管理加算2は、当該保険医療機関において実施される核医学診断、CT撮影及びMRI撮影について、専ら画像診断を担当する医師(地方厚生(支)局長に届け出た、専ら画像診断を担当した経験を10年以上有するもの又は当該療養について、関係学会から示されている2年以上の所定の研修を修了し、その旨が登録されている医師に限る。)が読影及び診断を行い、その結果を文書により当該専ら画像診断を担当する医師の属する保険医療機関において当該患者の診療を担当する医師に報告した場合に、月の最初の診断の日に算定する。なお、当該保険医療機関以外の施設に読影又は診断を委託した場合は、これらの加算は算定できない。
により算定する場合を除く。)また、これらの加算を算定する場合は、報告された文書又はその写しを診療録に貼付する。

太字の部分ではないでしょうか。解釈によっては、遠隔画像診断を頼んだら、常勤医がいても管理加算1もとれないようにも解釈できます。

  1. 当該保険医療機関以外の施設と言うのは、個人事業主はセーフ?
  2. 常勤医師や非常勤の医師が自宅からVPN回線などで当該保険医療機関に接続して読影した場合は含まれるのでしょうか。これは含まれないような気もしますが。
  3. 具体的には、病院内に読影室が確保できないので、近くのマンションを借りてそこから読影するのはOK?
  4. 本院が分院の検査を読影するのは?同一法人ならOK?医療機関コードが異なったらNG?

などの疑問もわきます。

ダメな理由が、画像診断に対する病院の体制を評価するものであるので、外注しているのはダメみたいなことが書いてありましたが、外注も含めて病院の体制な気もします。結果として、規定されている期間内に画像診断しているわけですから。

検体検査は外注してもよいのにね。院内で読んでも、遠隔画像診断でも読影するのに対する苦労は変わりません。遠隔画像診断だけ評価されないのは寂しいですよね。同じことをやっているのにね。

ただ、医療費が増え続けていることは事実なわけで、赤字国債を発行し続けているのも事実なわけです。1000兆ある借金を0にできるとは思えませんが、トントンでやっていけるような体制に持っていく必要はあると思います。他を減らしてくれとは思いますが、それはみんな思っているのでしょう。まぁ、ちりも積もればの本当にちりの部分だとは思いますが。

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遠隔画像診断でみた症例:下大静脈後尿管(retrocaval ureter)

下大静脈の発生異常により、右尿管が下大静脈の背側を走行する発生異常

下大静脈の発生異常

  • 下大静脈腎後部
    ・右後主静脈の遺残:下大静脈後尿管(retrocaval ureter)
    ・右上主静脈の遺残:正常
    ・左上主静脈の遺残:左側下大静脈(left-sided IVC)[0.2~0.5%]
    ・両上主静脈の遺残:重複下大静脈(double IVC, duplicated IVC)[1~3%]
  • 下大静脈腎部
    胎生期に下主静脈間吻合のレベルで、大動脈を取り囲む静脈輪が形成される。
    ・腹側枝が遺残:正常の左腎静脈
    ・背側枝も遺残:circum aortic renal vein
    ・背側枝のみ遺残:左後大動脈腎静脈(left retro-aortic renal vein)
  • 下大静脈腎前部
    ・下大静脈肝部欠損により、右上主静脈が全長にわたり遺残:奇静脈連結(azygos continuation)[0.6%]

下大静脈後尿管の病態

  • 大静脈の異常によるものと考えられており、ほとんどが右側に起こる
  • 尿管が下大静脈と椎骨に挟まれて圧迫するために、尿の流れが障害されて、それより近位側は水腎・水尿管症になりやすい。
  • 尿路感染症や結石を合併しやすい。

下大静脈後尿管の画像診断
IVP・CT・CTU⇒水腎症の存在・尿管の走行。単純でもthinslice CTで尿管の走行を同定できれば診断できる。CTUやIVPを行う際は 造影剤が停留しがちなので、腹臥位などにさせてみてもいいかもしれない。
高磁場MRIがあればRAREなどでとるstaticMRUが有効な可能性がある。

下大静脈後尿管の治療方針
症状がなければ保存的
手術:

  • 尿管切断、位置整復後の端々吻合(尿管に狭窄がある症例でも使える。術後の狭窄有り)
  • 下大静脈切断結紮、尿管位置整復が行われることもあった(両側下肢の浮腫などもあり)
  • 尿管膀胱新吻合術
  • 腎盂尿管移行部吻合術、腎盂形成術(成功率も尿管尿管吻合術よりも高い)
  • 腎摘(腫瘍や巨大な結石を伴うもの、機能のないものなど )
  • 下大静脈の切断、尿管の位置整復後の再吻合(術後の成績は良好)