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遠隔画像診断した症例:腸脛靭帯炎、腸脛靭帯摩擦症候群、ランナー膝、ランナーズニー(iliotibial band friction syndrome)

症状

  • 膝外側の違和感や痛み
    →走っている時、走り終えた時、患部を指で押した時など
  • 痛みが発生するタイミングは、足が曲がった状態から伸ばした時
  • Overuse syndromeの一つ

腸脛靭帯とは?

  • 大腿筋膜張筋 (tensor fasciae latae) の一部
    股関節の屈曲、 外転、 内旋、膝関節の伸展、 外旋 に関与
  • 大腿筋膜張筋は上前腸骨棘に起始し、腸脛靱帯を介し大腿の外側面を下方へと走行しながら脛骨粗面の外側のGerdy結節 (ジェルデイ結節) に停止する。

病態

腸脛靭帯は、膝を伸ばした時は大腿骨の前方に、曲げた時は後方に移動。この際に大腿骨外顆にこすられ発症する

診断

触診で診断されることが多いが、MRIが施行された場合は同部位に脂肪抑制T2WIで高信号を認める

画像診断した疾患:分枝粥腫型梗塞(Branch atheromatous disease:BAD)

臨床的脳梗塞分類

  • 心原性塞栓症
  • 動脈原性微小塞栓 artery-to-artery embolism
  • アテローム血栓性梗塞
  • 境界領域梗塞 borderzone infarct
  • ラクナ梗塞
  • 分枝粥腫型梗塞 branch-atheromatous disease (BAD)

Branch atheromatous disease(BAD)の総論

  • 1989 年にCaplan により提唱
  • BAD の診断基準は、2006年に高木が提唱。①画像検査上の梗塞巣の形状(テント上の外側線条体動脈領域梗塞では、梗塞像が水平断で3スライス以上に及ぶもの。テント下である傍正中橋動脈領域梗塞では、梗塞像が橋腹側に接しているもの。)②病側主幹動脈の高度狭窄(50%以上)または閉塞や心房細動のないこと。の2条件が基本
  • BAD 病理に基づくもので MRI 画像で穿通枝入口部閉塞と診断されたものが BAD タイプの梗塞
  • ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞の中間となる病態。
  • 外側線条体動脈、傍正中橋動脈が好発部位。
  • 本邦において諸外国より頻度が高い
  • 発症後しばしば症状(特に片麻痺)が進行し治療抵抗性となることが多い。
  • 分枝粥腫型梗塞は親動脈(主幹部から皮質枝)に生じたアテローム血栓性粥腫が、穿通枝分岐部から起始部レベルに高度狭窄ないしは閉塞をきたし、深部穿通枝支配領域の広範囲(中枢側から末梢まで)に病変をきたす
  • 親動脈のアテローム血栓性プラークによる深部穿通枝分岐部の閉塞、親動脈から深部穿通枝起始部にかかるjunctional plaque、深部穿通枝近位側に生じる微小粥腫(microatheroma) が原因
  • ラクナ梗塞と比較して両側の範囲が大きく穿通枝の走行、支配領域に一致して長軸方向に進展する。
  • 同一領域の複数の穿通校に閉塞をきたすこともある
  • 入院時に比較して入院後に神経症状が増悪することがしばしばみられるので、症状が比較的軽微で改善傾向を示すラクナ便塞とはきちんと鑑別する必要がある

Branch atheromatous disease(BAD)とラクナ梗塞

  • 穿通枝とは脳内主幹動脈から分岐した細い動脈であり、その閉塞によって生じるのが穿通枝梗塞
  • 穿通枝梗塞としてはラクナ梗塞が広く知られており、単一の深部穿通枝の閉塞による脳梗塞と定義。主に高血圧症を背景因子として、穿通枝の脂肪硝子変性(lipohyalinosis)による閉塞が原因。CT、MRIでは直径 1.5cm 以下の小さな梗
  • 近年、穿通枝梗塞に症状が進行しやすい Branch atheromatous disease(BAD)
    と言われる一群があり注目。
  • BAD の 発 症 機 序 と し て は、 穿 通 枝 が 主 幹 動 脈 か ら の 入 口 部 で 微 小 ア テ ロ ー ム 斑(microatheroma) により狭窄あるいは閉塞することによって生じる、画像上は長径1.5cm 以上の梗塞。
  • 分枝粥腫型梗塞 BAD:糖尿病、高脂血症。 起始部のアテローム硬化性変化→プラーク形成
  • ラクナ梗塞 Lacune:高血圧。 末梢のlipohyalinosisによる閉塞

Branch atheromatous disease(BAD)の治療

  • 治療法はその発生機序からアテローム血栓性梗塞に準じる 。
  • 抗凝固薬、抗血小板薬、脳保護薬の多剤併用療法が有用とする報告が散見されるが、現状ではその進行を抑制する治療法は確立されておらず、また急性期では死亡や重篤な後遺症を残存することは少ないものの、その機能予後は必ずしも良好ではない

Branch atheromatous disease(BAD)の画像診断

  • 梗塞巣は深部穿通枝の走行に沿って長軸方向に進展
  • 外側線条体動脈や視床膝状体動脈のBADでは側脳室体部上衣下まで梗塞が進展することがある
  • 深部穿通枝は起始部では動脈幹を形成し、末梢側で複数に分岐するので、血管長軸に直交する軸位断面でも、 高血圧性のラクナ梗塞よりも病変面積は大きい
  • 梗塞は1つの深部穿通校領域に限局する
  • 複数の深部穿通枝領域に広範囲に生じるものはBADではなく、中大脳動脈M1が一過性に塞栓性に閉塞して生じる梗塞
  • 傍正中動脈や短回旋枝のBADでは軸位像で、橋腹側を底部とする3角形状の最終梗塞を呈する
  • ほとんどの症例では原因となる粥腫を検出することはできない
  • 脳底動脈では傍正中動脈や短回旋枝起始部に限局性の壁肥厚、粥腫を検出できることがある

遠隔画像診断した疾患:副腎癌(adrenocortical carcinom)

副腎癌の一般的知識

  • 副腎は皮質と髄質よりなる
  • 副腎皮質癌は極めて稀で機能性腫瘍と、非機能性腫瘍がある
  • 100万人に2人程度と非常に稀ながん
  • 副腎髄質癌は、褐色細胞腫が悪性化したもの。悪性褐色細胞腫と呼ばれる
  • 二峰性の年齢分布を呈し10歳までと40歳代に多い
  • 90%で副腎皮質ホルモン産生過剰がみられ、50%の症例で症候性
  • 腺腫と比較して複数のホルモン過剰症状が認められることが多い
  • Cushing症候群に加えて男性化症状あるいは女性化症状が認められる
  • 小児では約8割の症例においてアンドロゲン産生による男性化を呈する
  • ホルモン異常を伴わない癌は、自覚症状が現れにくいので、発見されたときには
    大きな腫瘤を形成していることが多い(平均12- 15cm)
  • 副腎腺癌は巨大児、臍ヘルニア、巨舌を三徴とするBeckwith-Wiedemann症候群に合併する内臓悪性腫瘍のーつとしても知られる
  • 副腎偶発腫瘍のうち、悪性腫瘍の頻度は、腫瘍径 4cm 以下で 2%、4~6cm で 6%、6cm 以上で 25%。
  • 分化度の高い腫瘍は腺腫と同様に単純CTで低吸収値を示しうる
  • 典型的には内部に出血、壊死が著明であることが多い
  • 大きな病変では辺縁は不整で、肝・腎などの周囲臓器への浸潤を伴うこともある
  • 腫瘍栓を形成し、腎静脈や下大静脈内に進展する(鑑別となる他の腫瘍でも見られることがある)
  • 傍大動脈領域のリンパ節に転移を呈することが多い
  • 石灰化は約30%に見られる
  • 片側性
  • 20%の症例では発見時に転移がある
  • MRIでは内部の出血と壊死を反映して、T1強調像、T2強調像ともに不均一な高信号
  • アドステロールシンチグラフィは転移病巣の検出には有用だが良悪性の鑑別には寄与しない
  • FDG-PETでは、副腎皮質は代謝が活発で、良性腺腫でも取り込みが認められるため、良悪性の鑑別には必ずしも寄与しない
  • 非機能性の場合には転移に代表される他の副腎の悪性腫瘍との鑑別が問題
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遠隔画像診断でみた症例:下大静脈後尿管(retrocaval ureter)

下大静脈の発生異常により、右尿管が下大静脈の背側を走行する発生異常

下大静脈の発生異常

  • 下大静脈腎後部
    ・右後主静脈の遺残:下大静脈後尿管(retrocaval ureter)
    ・右上主静脈の遺残:正常
    ・左上主静脈の遺残:左側下大静脈(left-sided IVC)[0.2~0.5%]
    ・両上主静脈の遺残:重複下大静脈(double IVC, duplicated IVC)[1~3%]
  • 下大静脈腎部
    胎生期に下主静脈間吻合のレベルで、大動脈を取り囲む静脈輪が形成される。
    ・腹側枝が遺残:正常の左腎静脈
    ・背側枝も遺残:circum aortic renal vein
    ・背側枝のみ遺残:左後大動脈腎静脈(left retro-aortic renal vein)
  • 下大静脈腎前部
    ・下大静脈肝部欠損により、右上主静脈が全長にわたり遺残:奇静脈連結(azygos continuation)[0.6%]

下大静脈後尿管の病態

  • 大静脈の異常によるものと考えられており、ほとんどが右側に起こる
  • 尿管が下大静脈と椎骨に挟まれて圧迫するために、尿の流れが障害されて、それより近位側は水腎・水尿管症になりやすい。
  • 尿路感染症や結石を合併しやすい。

下大静脈後尿管の画像診断
IVP・CT・CTU⇒水腎症の存在・尿管の走行。単純でもthinslice CTで尿管の走行を同定できれば診断できる。CTUやIVPを行う際は 造影剤が停留しがちなので、腹臥位などにさせてみてもいいかもしれない。
高磁場MRIがあればRAREなどでとるstaticMRUが有効な可能性がある。

下大静脈後尿管の治療方針
症状がなければ保存的
手術:

  • 尿管切断、位置整復後の端々吻合(尿管に狭窄がある症例でも使える。術後の狭窄有り)
  • 下大静脈切断結紮、尿管位置整復が行われることもあった(両側下肢の浮腫などもあり)
  • 尿管膀胱新吻合術
  • 腎盂尿管移行部吻合術、腎盂形成術(成功率も尿管尿管吻合術よりも高い)
  • 腎摘(腫瘍や巨大な結石を伴うもの、機能のないものなど )
  • 下大静脈の切断、尿管の位置整復後の再吻合(術後の成績は良好)
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遠隔画像診断した疾患:内側側頭葉てんかん(mesial temporal lobe epilepsy: MTLE)

解剖

海馬体(hippocampalformation;HF)

  • 海馬体を冠状断で見ると、アンモン角と海馬台がC字型をし、間に海馬溝と歯状回が挟まれた形をしている
  • 海馬傍回の前下端に位置する嗅内野から連続する海馬台は、CA1からCA4の4つの部分に分けられるアンモン角へと続く
  • 海馬台の表層には浅髄板(superficial medullary lamina; SML)という有髄線維層があり、その浅髄板がなくなる部位からアンモン角が始まる

扇桃体(amygdala;Am)

  • 扇桃体は海馬体の前端に近接して、下角の前上壁を成すアーモンド型の灰白質構造
  • 肩桃体は主に6つの核から成るが、機能的には皮質内側扁桃体群と基底外側扁桃体に分けられる
  • 扁桃体からの出力投射は、分界条(striaterminalis ;ST)と腹側扁桃体遠心路があり、前者は皮質内側扁桃体群を主な起始核としている

海馬の血管支配

  • 後大脳動脈(posteriorcerebral artery)から、平均2~3 本の海馬動脈が起始し海馬の大部分を栄養
  • primaryarteriesは互いに吻合し、海馬滑に沿ってanastomoticarcadeを形成する
  • arcadeより多数のsecondary arteriesが分岐して海馬の大部分に分布
  • 海馬の前端部は前脈絡動脈のuncal branchによって栄養されることが多い

海馬のMRI解剖

  • MRIによる海馬の評価には,海馬長軸に垂直となる斜冠状断像が適する
  • T1強調像やT2強調像、またSTIRも皮髄境界のコントラストが良好

側頭葉てんかんの分類

Ⅰ: 臨床発作が側頭葉の内側底部辺縁系から起始する
扁桃体海馬発作 amygdalohippocampal seizure→内側側頭葉てんかん mesial temporal lobe epilepsy
Ⅱ: 臨床発作が側頭葉外側の新皮質から起始する
外側側頭葉発作 lateral temporal seizure→外側(新皮質)側頭葉てんかんLateral neocortical temporal lobe epilepsy

 

内側側頭葉てんかん(mesial temporal lobe epilepsy: MTLE)

  • てんかん国際分類では側頭葉てんかんは側頭葉外側の新皮質から起始する外側型と側頭葉の内側辺縁系である扁桃体海馬から起始する内側型とに二分される
  • 内側側頭葉てんかん(mesial temporal lobe epilepsy: MTLE)は辺縁系を主座として起始する
  • 内側側頭葉てんかんは海馬硬化症を原因とする一群の疾患群を中心とするもの
  • 海馬・扁桃核切徐を行うことによって高率に軽快する
  • 薬物治療より、外科治療が有意差を持って有効
  • わずかながらも術後遅発性に再発を起こすものが認められているが、 術後2年までに発作をおこさなかった症例の 92%はその後も発作をみていないことから、術後早期の発作頻度が長期的な予後を決定するものと考えられる。
  • 小児および高齢者の外科治療成績も、成人例とほぼ同様
  • 内側側頭葉てんかん (mesial temporal lobe epilepsy, 以下 MTLE) の中でも海馬硬化(hippocampal sclerosis,HS)を伴う MTLE-HS の診断が重要であるのは、診断が確定すれば外科治療によって 60-80%の発作抑制が得られるから
  • 海馬硬化は神経細胞の脱落とグリオーシスによる海馬の萎縮を特徴としている。
  • 海馬のみならず嗅内皮質や海馬傍回、扁桃体にも硬化所見が認められることから内側側頭葉硬化(mesial temporal sclerosis,MTS)とも呼ばれる
  • 5歳頃以前に熱性痙攣重積などの既往があり
  • てんかんの家族歴を有することがある。
  • 発症後にいったん緩解するが、再発すると難治に経過しやすい。
  • 上腹部感覚などの前兆が単独でおこりやすい。
  • 発作症状の組み合わせと出現順序に特徴がある。(前兆・無動・意識の変容・口部自動症・発作後健忘など)
  • 棘波は両側性が多い。
  • 海馬以外の領域(扁桃体や海馬傍回など)の硬化性変化と側頭葉の広範な機能低下を認める。
  • 素材特異性の記憶障害を伴う。
  • 頭蓋内脳波の発作発射は、断続的棘波 periodic spikesで始まり、緩徐に進展して一定の拡延様式をとることが多い。
  • 術後、前兆が残りやすく、再発することがある。

臨床的特徴

  • 側頭葉内側構造、主として海馬に発作起始を有し、いわゆる辺縁系発作という特徴的な発作症候を示す
  • 臨床発作症候を詳細に聴取すれば診断が比較的容易である
  • MRIで脳波と一致する側の HSの存在

MRI所見

  • MRIでの HSの診断に FLAIR (fluid attenuated inversion recovery) やプロトン密度画像を用いた海馬の高信号化、T2 強調画像での萎縮や高信号化、側脳室下角の拡大の所見が有用
  • てんかん患者におけるVSRAD解析やSPM5解析の結果、解析法の違いによる影響があるが、いずれも、てんかん焦点の存在する場所と考えられる左内側側頭葉に容積減少領域を示すという報告もある。
  • 海馬体の内部に側脳室下角に近接して、髄液と等信号を呈する小嚢胞構造を認めることがある。胎生期海馬溝が深部に残存した遺残腔と考えられており正常変異である

発作間欠期の PETあるいは SPECT

  • 焦点の部位が低代謝、低灌流を示す
  • ベンゾジアゼピン受容体を可視化した iomazenil(IMZ) SPECT も有効

発作時 SPECT

  • 発作焦点が発作起始時に高灌流
  • 発作時SPECTは発作開始直後に静注を行なわなければならないため、難度の高い検査法であるが、診断率は高い

手術法

    標準的側頭葉切除術、選択的扁桃体海馬切除術、前内側側頭葉切除術があり、選択的扁桃体海馬切除術が基本的な方法

海馬硬化症(hippocampalsclerosis)

  • 側頭葉てんかんの原因疾患として最も多くを占める
  • 扇桃核硬化など側頭葉内側病変を総称して内側側頭葉硬化と呼ぶこともある
  • 病理学的には、海馬、扁桃体から海馬傍回に及ぶ神経細胞脱落、グリオーシスから成る
  • 最も障害されやすい部位がCA1領域の錐体細胞層で、次いでCA3、C A4、歯状回頼粒細胞層であり、CA2、海馬台はや神経経細胞脱落、グリオーシスから免れることが多い
  • 特徴的な画像所見としては、片側海馬の萎縮、T2強調像やFLAIR像での海馬領域の高信号域がある
  • そのほか,海馬傍回の皮質白質境界の不鮮明化、海馬指の脳室面への凹凸の消失などが挙げられる