タグ別アーカイブ: 遠隔画像診断

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遠隔画像診断した症例;子宮筋腫の赤色変性(Red degeneration of uterine leiomyoma)

子宮筋腫の変性

ヒアリン変性;大きい筋腫の場合、内部の血流が低下し、ヒアリン変性をきたすことがある
石灰化;閉経後によく見られ、筋腫にカルシウムが沈着する。
浮腫
粘液性変性
嚢胞変性
赤色変性

特殊型

1) cellular leiomyoma (富細胞平滑筋腫)
2) epithelioid leiomyoma (類上皮平滑筋腫)
3) bizarre leiomyoma (変形平滑筋腫)
4) lipoleiomyoma (脂肪平滑筋腫)

子宮筋腫赤色変性

腫瘤辺縁の静脈血栓とされる血行障害による出血性梗塞・壊死が病態の本態
その名の通り、肉眼像で割面が暗赤色を呈することが特徴。
妊娠中に子宮の増大に伴い生じて急性腹症として発症することが多い。出産後や中絶後にも認められ、経口避妊薬の服用もリスクファクター。自分が経験したことがあるのはすべて、妊娠に関連するものです。

症状は疼痛、圧痛、悪心嘔吐。
NSAIDSによる保存的療法で改善することが多いが、症状が強い場合は手術。
感染の合併が多い。感染経路は主として内膜からの感染であり、 粘膜下筋腫に起こることが多い。

炎症の波及により流産の原因になることもある。その際、解剖学的な頸管無力症の評価してあげると、主治医に喜ばれる(頸管長の測定)

子宮筋腫の赤色変性の画像所見
基本的にT2強調像で真っ黒でない筋腫は良性とは言い切れない。
赤色変性は出血壊死を反映し、T2強調像では内部は不均一な信号を呈する。
T1 強調像では全体が高信号に描出され、辺縁部がより高信号で内部に行くに連れて薄まっていく所見は特徴的。
T1強調像で高信号だったり。T2強調像で低信号、SWIやT2*強調像で低信号に血栓自体が描出できるとしている文献もある
出血壊死なので造影によって造影されない。もともとT1強調像で高信号なので、Dynamic studyをしたほう良い。subtractionをすればだれでも分かる画像になる。

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遠隔画像診断した疾患;尿膜管癌(Urachal cancer)

尿膜管癌の好発部位:膀胱頂部
頻度:全膀胱腫瘍の0.14%-2.7%
好発年齢:40 -70歳代
男女比: 3: 2

胎生期に臍帯と膀胱頂部を結ぶ尿膜管は出生時には退化して正中臍索となる尿膜管の退
化が不完全なことがある。
尿膜管遺残はその形態により尿膜管開存、尿膜管洞、尿膜管嚢胞、尿膜管憩室
尿膜管由来の良性腫療:腺腫、線維腫、線維腺腫、過誤腫(いずれも非常に稀)
腺癌が90%、膀胱がんの腺癌のうち34%
ムチン産生性腺腫の場合は石灰化を伴うことが多い

尿膜管癌の画像所見

充実性、嚢胞性のいずれもあり得る。
CTでは腫瘍内部は不均一で低吸収
MRIでは腫瘍内部は T1強調画像で低信号、 T2強調画像で不均一な高信号
感染を伴った尿膜管嚢胞と尿膜管癌の鑑別は困難(泌尿器のカンファレンスに膿瘍か癌かでよく症例が出された記憶がありますが、鑑別困難だった気がします。)

尿膜管癌の臨床症状:腹膜外に発生するため無症状のことも多い。あるときは肉眼的血尿、膀胱刺激症状、粘液排出、尿混濁など

尿膜管癌の予後は通常の膀胱癌より不良

膀胱頂部の腫瘍の鑑別:膀胱癌、膀胱粘膜下腫瘍(傍神経細胞腫、平滑筋腫)、尿膜管腫瘍

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遠隔画像診断した疾患;上腕二頭筋腱長頭腱断裂(Rupture of the Biceps Tendon )

正常

  • 起始部は長頭と短頭に分かれる。
  • 長頭は肩甲骨関節上結節~上腕二頭筋長頭腱として関節包内、上腕骨結節間溝~大部分は橈骨粗面に停止。一部は尺骨の前腕筋膜に停止。
  • 短頭は肩甲骨烏口突起~大部分は橈骨粗面に停止。一部は尺骨の前腕筋膜に停止。
  • 支配神経は筋皮神経。
  • 前腕の屈曲と回外。
  • 屈曲時には上腕筋、烏口腕筋などと共に協調して働く。
  • 前腕屈曲位の拮抗筋は上腕三頭筋。
  • 前腕の回外は回外筋、腕橈骨筋などと協調して働く。

上腕二頭筋腱長頭腱断裂

  • 上腕二頭筋は長頭と短頭の2つからなり、炎症や断裂のほとんどが長頭側でおこる
  • 断裂した場合、断裂直後は肩から上腕にかけて痛みがでるが、痛みは数日で落ち着くことがほとんど
  • その後、皮下出血や腫脹がみられ、力こぶの出来る位置がずれる
  • 上腕二頭筋長頭腱炎:野球やバレーボール・水泳。中高年の人では、特に運動をしていなくても肩関節周囲炎の一つの症状として発生
  • 炎症や刺激が繰り返し起こることで、徐々に弱化していき変性した結果、断裂に至る場合と一度の外傷で断裂に至ることがある。
  • 上腕二頭筋長頭腱が断裂した場合、受傷部以外の上腕二頭筋腱と肘関節屈曲に働く他の筋群があるため、若干の筋力低下あるが、機能上は問題がなく、年配者では完全に断裂してもそのままの状態で保存的治療が施されることがほとんど。
  • MRIでは長頭腱の欠損または狭小化が認められる。断裂した腱が遠位側に退縮すると横断像で結節間溝に腱が同定できなくなるが細い腱が癒着して残っていることもある
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遠隔画像診断した症例:副骨(accessory ossicle)と種子骨(sesamoid bone)

  • 副骨:発達段階の正常変異。主骨の骨化中心から発生した二次骨化中心として出現。
    主骨の近傍もしくは、やや離れる。裂離骨折との鑑別が問題となりやすい。
  • 種子骨:5-10mmの円形から楕円形の小骨で、固有の骨化中心から発生。種子骨は近傍の靭帯内にある。症状を呈する頻度は副骨よりも低い。
  • 人口の約3%で足関節周囲に複数の副骨や穂子骨が同定される。

外脛骨

  • 最も頻度が高いのは外脛骨(4~21%)で舟状骨の内側に見られる。両側のことが多い

三角骨

  • 距骨背側部の骨化は8~13歳で開始し、約1 年で癒合が完了する。
  • 5-10%の頻度で分離したままの状態となり、 三角骨(os trigonwn)とよばれる。
  • 繰り返す背屈運動によるimpingementが原因で痛みが生じることがある(足関節後方インピンジメント症候群)
  • 定義では三角骨に限らず、足関節後方に存在する骨・軟骨組織がインピンジメントすることで生じる疼痛や可動域制限を引き起こす症候群。
  • サッカー選手やバスケットボール選手、バレエダンサーに多い(クラシックバレエが多い)
  • 裂離骨折とのは三角骨は通常円形もしくは楕円形であり、骨折時にみられる距骨外側結節と
    の関節側の不整像がみられない点が鑑別のポイント。(骨皮質のあるなしも)
  • テーピングや包帯などで足関節の底屈を制限することにより症状が改善することが多いが、再発を繰り返すなど慢性的経過を呈するものではope

外果の二次骨化中心の癒合不全

  • 外果の二次骨化中心は生後1年ほどで出現。この二次骨化中心の癒合不全はos subfibulare
    とよばれる。前距腓靭帯の付着部であるので、大半に症状をきたしATFL断裂の頻度が高い。

自分が今回経験したものは、三角骨でした。臨床からは剥離骨折疑いで依頼を頂きました。

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遠隔画像診断した症例;ワレンベルグ症候群 、延髄外側症候群(Wallenberg’s syndrome、lateral medullary syndrome LMS)

ワレンベルグ症候群の疫学

若年に多い(解離が原因であることが多いため)

脳幹梗塞に伴う症候群

  • medial midbrain syndrome(Weber’ s syndrome)
  • paramedian midbrain syndrome
  • superolateral pontine syndrome
  • medial pontine syndrome(Millard-Gubler syndrome, Gubler syndrome)
  • inferolateral pontine syndrome(Fovi lle’ s syndrome)
  • medial medullary syndrome(Dejerine’ s syndrome)
  • lateral medullary syndrome(Wallenberg’ s syndrome)

ワレンベルグ症候群の病因

  • 椎骨動脈(VA)、後下小脳動脈(PICA)の解離や血栓症
  • 椎骨動脈解離はスポーツやカイロプラクティックなどの軽度の外傷に伴うことが多い
  • 椎骨動脈解離の特徴的な臨床症状として片側の後頭部~後頭部痛
  • 椎骨動脈解離の基礎疾患として、 繊維筋性異形成症、 Marfan 症候群、Ehlers- Danlos 症候群、 嚢胞性中膜壊死、 膠原病性血管病変

ワレンベルグ症候群の障害部位

延髄外側

脊髄視床路、交感神経下行路、三叉神経(CN V)、迷走神経(CN X)、小脳半球、下小脳脚、オリーブ核小脳路、脊髄小脳路(腹側脊髄小脳路、背側脊髄小脳路)

ワレンベルグ症候群の症状

全身
  • 頭痛、回転性めまい、悪心・嘔吐
障害側と同側に
  • 嘔吐、悪心、幻暈(めまい)、眼振;前庭神経核(聴神経(Ⅷ)感覚核)の障害。
  • 球麻痺(嚥下障害、構音障害、嗄声)カーテン徴候;疑核(舌咽神経(Ⅸ)・迷走神経(Ⅹ)運動核)の障害。
  • 味覚障害;孤束核(舌咽神経(Ⅸ)・迷走神経(Ⅹ)感覚核)の障害。
  • 上下肢の小脳症状;下小脳脚の障害。
  • ホルネル症候群;交感神経下行路の障害。
  • 顔面の温痛覚障害;三叉神経脊髄路核の障害。
障害側と対側に
  • 頸部以下、体幹・上下肢の温痛覚障害;外側脊髄視床路の障害。

内側を通る錐体路(運動系の経路)や内側毛帯(深部覚の経路)は障害されないことが特徴。

延髄内側症候群(Dejerine症候群);舌下神経麻痺がないこと、錐体路障害が無いことが鑑別点。

ワレンベルグ症候群のMRI 所見

  • 延髄外側の異常信号域として認められ、PICA 領域の小脳梗塞を伴う場合もある
  • 急性別病変はDWI で高信号を示すが、 急性脳幹梗塞塞の検出率は大脳病変と比べて低い
  • MRAによって病変の部位や原因を推定しうる
  • 椎骨動脈解離の画像診断におけるgold standardは血管造影とされてきたが、 MRI も高い診断能を有する
  • 解離の直接所見“ double lumen sign” (偽腔の摘出) やintimal flap :血管造影でも有所見率は20% 程度、 “pearl and string sign” は間接所見
  • MRI では高分解能造影T1 強調像によって、より高率に“double lumen” が証明できる
  • 血管壁の血腫を示唆するT1 強調像の高信号も有用な所見(経験的にはかなり有用)
  • 血管内腔の評価にはMRA も有用であるが、TOF MRA ではT1 強調像で高信号を示す壁内血腫と偽腔の鑑別が困難で、 造影MRA が両者の鑑別に有用
  • 血管の内腔の情報(TOF MRA)と外径の情報(BPAS heavy T2WI)の差が診断に有用

画像機査の進め方

  • Wallenberg 症候群で小脳梗塞を伴わない場合にはMRI が第一選択
  • 急性期病変を診断するためのDWI、後頭部を中心とした薄いスライスのDWIが有用
  • 椎骨動脈解離の診断には、薄いスライスのT1 強調像、TOF MRA、BPAS が有用
  • 血行動態の把握や治療法の選択には血管造影が必要となる場合がある

ワレンベルグ症候群の鑑別療患

1) hypertrophic olivary degeneration (オリーブ核仮性肥大) : Wallenberg 症候群で下オリーブ核に限局した病変が見られる場合の錐別疾患。先行する同側赤核や対側歯状核の病変が存在

2) 多発性硬化症、脳幹脳炎など: 臨床症状で多くの場合, 鑑別可能。画像所見では、病変の広がり、他病変の存在、DWI での信号強度などが鑑別の情報となる

ワレンベルグ症候群の治療法

対症療法が主体

ワレンベルグ症候群の予後

梗塞範囲の大きさに依存する。

数週間または数ヶ月以内に症状の軽減を自覚するものもいれば、年余に亘って重篤な神経学的障害が残ることもある。