タグ別アーカイブ: 遠隔画像診断

fuyu59

遠隔画像診断した疾患:閉鎖孔ヘルニア(Obturator hernia)

  • •閉鎖孔の外上方で、後腹膜腔から大腿に向けて閉鎖膜を貫いて走行している閉鎖管を通って大腿内側に脱出するもの。
  • 60歳以上の高齢者が80%
  • 男女比は 1:20~25 と圧倒的に女性に多い。(やせ型の多産婦に多い。)
  • 嵌頓臓器はほとんどが、回盲弁から100cm以内の小腸。
  • 一般の腸閉塞のうち閉鎖孔ヘルニアが原因となることは0.4%と非常に稀。
  • ヘルニアは大腿の深部に突出するので、通常腫瘤として気づかれることはほとんどない。
  • ヘルニア門が小さく強靭であるため嵌頓を起こしやすく、嵌頓によって初めて症状が起こる。
  • 小腸の嵌頓型は50~78%が、腸管壁の一部が嵌頓する Richter 型嵌頓。
  • このため初期には不完全腸閉塞が生じて腹痛・嘔吐が出ても、自然環納が起こり症状が改善してしまうことがある。
  • 自然環納が起こらずに時間が経過すると完全腸閉塞に進展する。
  • 閉鎖管内を走行する閉鎖神経が圧迫されて、膝から大腿内側、時に股関節部に痛みが出現することがある。痛みは大腿を伸展・外転・外旋させたり、咳をさせると増強する(Howship-Rombergsign)。
  • 開腹歴のない高齢女性の腸閉塞では、大腸ガンによるものと、ヘルニアを考える。
  • 鼠径/大腿ヘルニアは身体所見で診断できる。閉鎖孔ヘルニアは、骨盤の閉鎖孔に腸管が嵌頓し腸閉塞で発症する。
  • 高齢で、低身長の痩せ形女性に多い。数年前までは、外表変化が全くないためベッドサイドで診断することは不可能とされてきたが、近年、CT で容易に診断できるようになり、さらに最近では、US による術前診断率が向上してきた。
  • 腸閉塞では、腹部の診察だけで済ませがちであるが、下着を下ろして、鼠径部のUS を行うことが必要である。鼠径靭帯のやや尾側で、外閉鎖筋と、恥骨筋の間に嵌頓腸管が見える。
  • 直腸診で圧痛のある閉鎖孔ヘルニアを蝕知できる。

Howship-Romberg 症状

•閉鎖神経圧迫症状による大腿内側におよぶ疼痛。

画像所見

•閉鎖孔外側に、径約1-2cm大の造影効果を伴わない腫瘤影を認める。

腫瘤は骨盤内の腸管と連続し、口側腸管の著明な拡張を認める。•

治療

  • ヘルニア環納・修復術、壊死腸管切除術。
  • 最近は腹腔鏡下手術による腹腔外からのアプローチが一般的

閉鎖孔(obturator foramen)

  • 骨盤腔の坐骨、恥骨と腸骨に囲まれる三角形の空隙
  • 骨盤腹膜、内閉鎖筋と外閉鎖筋で閉じられている

Richter(型)ヘルニア

  • 腸管壁の一部(通常は腸間膜対側)のみが嵌頓・絞扼する特殊なヘルニア
  • 腸壁ヘルニアとも呼ばれる
  • Scarpaの法則
  • 部位は大腿ヘルニアが最も多く(大腿ヘルニア軟頓の10-33%)、腸管は回腸が多い

Scarpaの法則

  • 腸壁全周の2/3以上が嵌頓すると完全腸閉塞を起こす
  • 1/3だけでは腸閉塞を起こさず鼠径部痛や大腿部痛だけを訴えることがある
  • 半周程度では不完全閉塞を起こす

遠隔画像診断した症例:硬膜動静脈瘻(Dural arteriovenous fistula)

  • 先天的な血管奇形ではなく,硬膜に後天的に生じる
  • 外傷後に発生するものもあるが,多くは原因不明の特発性
  • 中高年女性に好発する.
  • Interestingly, cranial DAVF are more commonly diagnosed in women over the age of 40 years while spinal DAVF are more commonly diagnosed in men over the age of 40 years.

硬膜動静脈瘻の発生機序

  • 先行する静脈洞血栓症が重要な役割を果たしている
  • 静脈洞が血栓で閉塞すると,閉塞部の硬膜を栄養している動脈末梢枝の内圧が上昇し,静脈洞内へ短絡が形成される可能性がある.
  • When a venous sinus blocks off for whatever reason, the brain can try to compensate by moving venous blood across other parallel or collateral pathways. In this process, however, a fistula may form, representing an abnormal collateral pathway to drain blood away from the brain.

硬膜動静脈瘻の発生部位

  • 脊柱管内を含め,硬膜の存在するあらゆる部位に発生する
  • 横~S状静脈洞に最も好発し,次いで海綿静脈洞に多く見られる.

硬膜動静脈瘻の臨床症状

  • 発生部位によってはさまざま
  • 初期には耳鳴や眼球結膜充血.
  • 皮質静脈への逆流がある例では出血や静脈性梗塞の危険性が高く,痙攣,高次脳機能障害,意識障害などをみることがある.

Cognard分類

AVF

  • Type Iは臨床的に問題にならないが,経過を追うとtype IIa+bなどへ変化することが知られている.
  • 塞栓術などの治療後に他部位に生じることもあり,自然治癒例も見られる.

硬膜動静脈瘻のMRI所見

  • 静脈洞内に限局している場合には,T2強調像で異常を指摘できないことが多い.
  • 皮質静脈への逆流が生じると,脳溝内に拡張した静脈を指摘できる場合がある.
  • 静脈うっ滞によって細胞外性浮腫や静脈性梗塞が生じると,T2強調像では高信号で,DWIではADC値が上昇した病変が見られる.
  • 浮腫の範囲は一般的に広範囲.
  • 皮質下出血を合併する.

画像検査の進め方

  • 皮質静脈への逆流がない症例ではルーチンMRIでの診断は困難である.T2強調像にて脳溝内に拡張した静脈を指摘できた場合には,
  • 通常の3D-TOF法によるMRAを追加して,静脈洞内の異常信号と硬膜動脈枝の拡張を確認して診断がほぼ確定できる
  • 造影はあえて必要ないが,造影を行う場合にはMR-DSAを施行すれば,おおまかな血行動態を知ることができる.
  • MRvenography(MRV)も静脈系の血行動態の診断の参考になる.
  • CTやCTAを追加する意義は小さい.
  • 最終的には選択的脳血管造影が必要である.

How is a dural arteriovenous fistula (DAVF) treated?

  • 開頭手術
  • 血管内治療

This process is known as embolization.

Sometimes, embolization is used alone to obliterate the fistula, or it may be used as a helpful additional option prior to open surgery, to help shut down as much of the fistula as possible prior to the operation.

Note that radiation techniques including stereotactic radiosurgery (SRS) have not been proven to be helpful in the treatment of DAVF, but they have been shown to be helpful in AVM treatment ( take me to the section on AVM now).

fuyu1

結節性硬化症(プリングル病)tuberous sclerosisまたはBourneville-Pringle、略称:TS, TSC)

概要・定義
・1862年von Recklinghausenにより初めて報告
・本症の遺伝形式は常染色体優性遺伝
・16番の染色体上に結節性硬化症の遺伝子の一つTSC2遺伝子が、1997年にVan Slegtnenhorstらによって9番の染色体上にTSC1の遺伝子があいついで同定される
・本症は全身の過誤腫を特徴とする全身性疾患で、古典的には、知能低下、癲癇発作及び顔面の血管線維腫(angiofibroma)を三主徴
・三主徴全てがそろうものは29%
・臨床症状の程度にはばらつきが多く、親子、兄弟例であっても症状の程度が同様とは限らない。
■疫学
・日本における結節性硬化症の頻度は、おおよそ人口7千人に1人の割合
・患者数は1万5千人前後
・結節性硬化症は常染色体優性遺伝性の遺伝病であるが、60%近くが弧発例
・本症の死因は、腎不全等腎病変、脳腫瘍等中枢神経系病変、次いで心不全が高頻度に報告
・10歳以上では腎病変が主な死因であるのに対し、10歳未満では、心血管系の異常(心臓の横紋筋腫(Cardiac rhabdomyomas)による心不全)が主な死因
・10代の主な死因としては、脳腫瘍(Subependymal Giant Cell  Astrocytoma,SEGA)が特徴的
・40歳以上の死因では特に女性において腎病変と並んで肺のLymphangiomyomatosis(LAM)が特徴的に増加する
・痙攣発作が関与する死因は40歳未満がほとんどである。
■病因
・本症の原因遺伝子として、TSC2の遺伝子とTSC1の遺伝子が同定されている
■症状
皮膚症状
・白斑は生下時あるいは出生後早期に出現するが、その他の症状は思春期以降に著明になることが多い。
白斑(hypomelanotic macule)、顔面の血管線維腫(Facial Angiofibroma; FA)、爪下線維腫(ungual fibromas, Koenen tumor)、軟線維腫(Soft fibromas)、懸垂性軟属腫(Molluscum fibrosum pendulum)、Miliary soft fibroma、粉瘤(Atheroma)、頬粘膜、歯肉部の線維腫様増殖、歯エナメル質の多発性小孔(Dental enamel pits)なども認められる。
精神神経学的症状
痙攀発作と精神発達遅滞、自閉症などの行動異常
本症の70~80% にsubependymal nodulesが認められ、側脳室壁に好発する。そのうちの径が1cm以上とおおきく増大傾向のあるSubependimal Giant Cell Astrocytoma(SEGA)は本症に特徴的で、結節性硬化症患者の6%以上がSEGAをもっており、小児期から思春期にかけて急速に増大する事が多い。腫
心症状
心横紋筋腫は胎生期に出現し出生時にもっとも著明になる。
新生児期、乳幼児期における結節性硬化症の重要な死因のひとつとなるが、大部分は無症状で、加齢とともに縮小消退していく。
腎症状
嚢腫(cyst)、血管筋脂肪腫(Angiomyolipoma;AML)および腎癌(renal cell carcinoma)
腫瘍径が4cmを越える時には、腫瘍サイズが増大しやすく、自然破裂の確率が高くなる。腫瘍の発育は様々であるが、特に10代の腎腫瘍では急速に増大することが多く、突然後腹膜への大量出血を起こして、ショック症状に陥ることもある。
腎癌と結節性硬化症との関係は血管筋脂肪腫や、腎嚢腫ほどはっきりとはしていない。
その他extrapulmonary lymphangioleiomyomatosisとして、Lymphangiomatous cystsを認めることもある。
呼吸器症状
multifocal micronodular type 2 pneumocyte hyperplasia (MMPH) とpulmonary Lymphangiomyomatosis (LAM)
眼症状
網膜の多発性結節性過誤腫(multiple retinal nodular hamartomas)
網膜の白斑、虹彩脱色素斑。
血管症状
大血管の動脈瘤。
腎動脈や肺動脈、肝動脈などの中型の動脈血管の血管壁の中膜が肥厚し、弾性板が欠如し、硝子化をおこして内腔の狭窄をひきおこすことがある。
骨症状
骨病変は本症では高頻度に出現し(45~66%)、頭蓋骨、脊椎、骨盤にはしばしば骨硬化像が認められる。
手や足の骨、特に、中手骨や中足骨では、周囲に骨の新生を伴った、嚢腫様の病変が認められる。
肝症状
血管筋脂肪腫や血管腫が多い。その他、肝腺腫などを認める。
消化管症状
頬粘膜、歯肉、舌底面、口蓋にも線維腫などの腫瘍が認められる。歯にenamel defect (enamel pit)と呼ばれる小さなエナメル質の欠損を高頻度に認める。
大腸の壁の一部が肥厚し、内腔の狭窄をおこすことがある。直腸の線維腫性ポリープが認められる。
■診断
遺伝子診断が最も確実な診断方法と考えられる
結節性硬化症のConsensus Conferenceで批准された診断基準(Roach ER et al. J Child Neurol 13:624-628,1998)と日本皮膚科学会の提唱する結節性硬化症の診断基準及び治療ガイドラインがある。

http://atlasgeneticsoncology.org/Tumors/LymphangioleiomyomaID5868.html
LAMがあり、AMLがあり、骨病変がある症例で、縦隔に多発するmassがあった。単純CTなので詳細な質的診断はできないのであるが、個々を参照すると、extrapulmonary lymphangioleiomyomaの可能性もあるのかなと思った。
もちろん、結節性硬化症+metaや悪性リンパ腫を合併したことが鑑別になるとは思いますが。

fuyu68

CTの読影で肋骨って見るのが大変ですよね

肋骨骨折精査などでCTのオーダーをいただくことがあります。3D のワークステーションがある環境であれば、ボリュームレンダリングの画像を作ることによって一目瞭然のことが多いです。また、肋骨の角度に沿ったオブリークアキシャール像(斜めの断面の画像)を作ることによっても大変見やすくなります。

検査自体のオーダーを出してコントロールできる環境であれば上記のように比較的簡単なのですが、普通の胸部 CT が撮影されており、それを遠隔画像診断をしなければならない時などは大変な時があります。骨条件にしてみるしかないのですが、微妙な時が多いですし。一本一本に丁寧に見ないと見逃すことも多いと思われます。

またはっきり肋骨骨折精査であれば良いのですが、胸痛精査の際にも肋骨骨折が原因の人は大変多いように思われます。そんなケースはほとんど読影したことないなんていう人もいますが、骨条件で丁寧に見てないだけなんでないかなと思います。

確かに主訴の原因をとなるような病変がCT上ないことも有りますが、できるだけ説明しうる病変がないかを懸命に画像診断しています。僅かな肋骨骨折を見つけたところで治療方針が変わらないし、、、なんていう人もいますが、そのような人は当社にはいませんのでご安心ください。

fuyu59

遠隔画像診断した疾患;精索静脈瘤(varicocele)

疫学

一般男性の15%に精索静脈瘤が認められ、男性不妊症患者の40%以上に認められる。(治療可能な男性不妊の一番の原因)

病理学

蔓状静脈叢は通常、精巣の温度を35度程度に保つために働いているが、精索静脈瘤の患者では37度ほどにもなる
徐々に増悪する傾向がある

原因

プライマリーとセカンダリーに分けられる
プライマリー精索静脈瘤
ほとんどの精索静脈瘤がプライマリーで、静脈の弁の欠損によって引き起こされる

セカンダリー精索静脈瘤
腹腔内腫瘤や、左腎静脈血栓、門脈圧亢進症などによって精巣静脈の厚の上昇によって引き起こされる
両側静脈瘤はまれ ( ≈ 15 %)、右側のみはもっとまれ( ≈ 5%).

臨床症状

無症状
陰嚢内mass(こりこりしたものを触れるなど)
陰嚢腫大
陰嚢痛
精巣萎縮
男性不妊

画像診断

超音波
蔓状静脈叢の3mm以上の拡張、特徴的な蛇行した所見が見られる
バルサルバ法で逆流が確認できる

CT
造影で拡張した精巣静脈が描出できる

MRI
拡張した静脈叢が描出でききる
low flowならT1強調像で等信号、T2強調像で高信号
high flowなら信号欠損として描出される
造影すれば造影される。
@普段あまりこの分野は画像診断の対象になることがないと思われるので、まずは正常像を正しく認識することが重要と思われる。正常が頭に入っていれば自ずと診断できる。

治療

男性不妊の際に考慮される
高位結紮術、顕微鏡低位結紮術、腹腔鏡下結紮術、経皮的塞栓術