遠隔画像診断した疾患:副腎癌(adrenocortical carcinom)

副腎癌の一般的知識

  • 副腎は皮質と髄質よりなる
  • 副腎皮質癌は極めて稀で機能性腫瘍と、非機能性腫瘍がある
  • 100万人に2人程度と非常に稀ながん
  • 副腎髄質癌は、褐色細胞腫が悪性化したもの。悪性褐色細胞腫と呼ばれる
  • 二峰性の年齢分布を呈し10歳までと40歳代に多い
  • 90%で副腎皮質ホルモン産生過剰がみられ、50%の症例で症候性
  • 腺腫と比較して複数のホルモン過剰症状が認められることが多い
  • Cushing症候群に加えて男性化症状あるいは女性化症状が認められる
  • 小児では約8割の症例においてアンドロゲン産生による男性化を呈する
  • ホルモン異常を伴わない癌は、自覚症状が現れにくいので、発見されたときには
    大きな腫瘤を形成していることが多い(平均12- 15cm)
  • 副腎腺癌は巨大児、臍ヘルニア、巨舌を三徴とするBeckwith-Wiedemann症候群に合併する内臓悪性腫瘍のーつとしても知られる
  • 副腎偶発腫瘍のうち、悪性腫瘍の頻度は、腫瘍径 4cm 以下で 2%、4~6cm で 6%、6cm 以上で 25%。
  • 分化度の高い腫瘍は腺腫と同様に単純CTで低吸収値を示しうる
  • 典型的には内部に出血、壊死が著明であることが多い
  • 大きな病変では辺縁は不整で、肝・腎などの周囲臓器への浸潤を伴うこともある
  • 腫瘍栓を形成し、腎静脈や下大静脈内に進展する(鑑別となる他の腫瘍でも見られることがある)
  • 傍大動脈領域のリンパ節に転移を呈することが多い
  • 石灰化は約30%に見られる
  • 片側性
  • 20%の症例では発見時に転移がある
  • MRIでは内部の出血と壊死を反映して、T1強調像、T2強調像ともに不均一な高信号
  • アドステロールシンチグラフィは転移病巣の検出には有用だが良悪性の鑑別には寄与しない
  • FDG-PETでは、副腎皮質は代謝が活発で、良性腺腫でも取り込みが認められるため、良悪性の鑑別には必ずしも寄与しない
  • 非機能性の場合には転移に代表される他の副腎の悪性腫瘍との鑑別が問題

3/5に「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(平成26年厚生労働省告示第56号)等が公布されました

平成26年4月1日より適用されることとなりました。

当社のみならず、遠隔画像診断を行っている人たちが気になっているのは

第4部 画像診断

<通則>
5 画像診断管理加算
画像診断管理加算1は、専ら画像診断を担当する医師(地方厚生(支)局長に届け出た、専
ら画像診断を担当した経験を10年以上有するもの又は当該療養について、関係学会から示されている2年以上の所定の研修を修了し、その旨が登録されている医師に限る。)が読影及び診断を行い、その結果を文書により当該専ら画像診断を担当する医師の属する保険医療機関において当該患者の診療を担当する医師に報告した場合に、月の最初の診断の日に算定する。

画像診断管理加算2は、当該保険医療機関において実施される核医学診断、CT撮影及びMRI撮影について、専ら画像診断を担当する医師(地方厚生(支)局長に届け出た、専ら画像診断を担当した経験を10年以上有するもの又は当該療養について、関係学会から示されている2年以上の所定の研修を修了し、その旨が登録されている医師に限る。)が読影及び診断を行い、その結果を文書により当該専ら画像診断を担当する医師の属する保険医療機関において当該患者の診療を担当する医師に報告した場合に、月の最初の診断の日に算定する。なお、当該保険医療機関以外の施設に読影又は診断を委託した場合は、これらの加算は算定できない。
により算定する場合を除く。)また、これらの加算を算定する場合は、報告された文書又はその写しを診療録に貼付する。

太字の部分ではないでしょうか。解釈によっては、遠隔画像診断を頼んだら、常勤医がいても管理加算1もとれないようにも解釈できます。

  1. 当該保険医療機関以外の施設と言うのは、個人事業主はセーフ?
  2. 常勤医師や非常勤の医師が自宅からVPN回線などで当該保険医療機関に接続して読影した場合は含まれるのでしょうか。これは含まれないような気もしますが。
  3. 具体的には、病院内に読影室が確保できないので、近くのマンションを借りてそこから読影するのはOK?
  4. 本院が分院の検査を読影するのは?同一法人ならOK?医療機関コードが異なったらNG?

などの疑問もわきます。

ダメな理由が、画像診断に対する病院の体制を評価するものであるので、外注しているのはダメみたいなことが書いてありましたが、外注も含めて病院の体制な気もします。結果として、規定されている期間内に画像診断しているわけですから。

検体検査は外注してもよいのにね。院内で読んでも、遠隔画像診断でも読影するのに対する苦労は変わりません。遠隔画像診断だけ評価されないのは寂しいですよね。同じことをやっているのにね。

ただ、医療費が増え続けていることは事実なわけで、赤字国債を発行し続けているのも事実なわけです。1000兆ある借金を0にできるとは思えませんが、トントンでやっていけるような体制に持っていく必要はあると思います。他を減らしてくれとは思いますが、それはみんな思っているのでしょう。まぁ、ちりも積もればの本当にちりの部分だとは思いますが。

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遠隔画像診断でみた症例:下大静脈後尿管(retrocaval ureter)

下大静脈の発生異常により、右尿管が下大静脈の背側を走行する発生異常

下大静脈の発生異常

  • 下大静脈腎後部
    ・右後主静脈の遺残:下大静脈後尿管(retrocaval ureter)
    ・右上主静脈の遺残:正常
    ・左上主静脈の遺残:左側下大静脈(left-sided IVC)[0.2~0.5%]
    ・両上主静脈の遺残:重複下大静脈(double IVC, duplicated IVC)[1~3%]
  • 下大静脈腎部
    胎生期に下主静脈間吻合のレベルで、大動脈を取り囲む静脈輪が形成される。
    ・腹側枝が遺残:正常の左腎静脈
    ・背側枝も遺残:circum aortic renal vein
    ・背側枝のみ遺残:左後大動脈腎静脈(left retro-aortic renal vein)
  • 下大静脈腎前部
    ・下大静脈肝部欠損により、右上主静脈が全長にわたり遺残:奇静脈連結(azygos continuation)[0.6%]

下大静脈後尿管の病態

  • 大静脈の異常によるものと考えられており、ほとんどが右側に起こる
  • 尿管が下大静脈と椎骨に挟まれて圧迫するために、尿の流れが障害されて、それより近位側は水腎・水尿管症になりやすい。
  • 尿路感染症や結石を合併しやすい。

下大静脈後尿管の画像診断
IVP・CT・CTU⇒水腎症の存在・尿管の走行。単純でもthinslice CTで尿管の走行を同定できれば診断できる。CTUやIVPを行う際は 造影剤が停留しがちなので、腹臥位などにさせてみてもいいかもしれない。
高磁場MRIがあればRAREなどでとるstaticMRUが有効な可能性がある。

下大静脈後尿管の治療方針
症状がなければ保存的
手術:

  • 尿管切断、位置整復後の端々吻合(尿管に狭窄がある症例でも使える。術後の狭窄有り)
  • 下大静脈切断結紮、尿管位置整復が行われることもあった(両側下肢の浮腫などもあり)
  • 尿管膀胱新吻合術
  • 腎盂尿管移行部吻合術、腎盂形成術(成功率も尿管尿管吻合術よりも高い)
  • 腎摘(腫瘍や巨大な結石を伴うもの、機能のないものなど )
  • 下大静脈の切断、尿管の位置整復後の再吻合(術後の成績は良好)
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遠隔画像診断した疾患:内側側頭葉てんかん(mesial temporal lobe epilepsy: MTLE)

解剖

海馬体(hippocampalformation;HF)

  • 海馬体を冠状断で見ると、アンモン角と海馬台がC字型をし、間に海馬溝と歯状回が挟まれた形をしている
  • 海馬傍回の前下端に位置する嗅内野から連続する海馬台は、CA1からCA4の4つの部分に分けられるアンモン角へと続く
  • 海馬台の表層には浅髄板(superficial medullary lamina; SML)という有髄線維層があり、その浅髄板がなくなる部位からアンモン角が始まる

扇桃体(amygdala;Am)

  • 扇桃体は海馬体の前端に近接して、下角の前上壁を成すアーモンド型の灰白質構造
  • 肩桃体は主に6つの核から成るが、機能的には皮質内側扁桃体群と基底外側扁桃体に分けられる
  • 扁桃体からの出力投射は、分界条(striaterminalis ;ST)と腹側扁桃体遠心路があり、前者は皮質内側扁桃体群を主な起始核としている

海馬の血管支配

  • 後大脳動脈(posteriorcerebral artery)から、平均2~3 本の海馬動脈が起始し海馬の大部分を栄養
  • primaryarteriesは互いに吻合し、海馬滑に沿ってanastomoticarcadeを形成する
  • arcadeより多数のsecondary arteriesが分岐して海馬の大部分に分布
  • 海馬の前端部は前脈絡動脈のuncal branchによって栄養されることが多い

海馬のMRI解剖

  • MRIによる海馬の評価には,海馬長軸に垂直となる斜冠状断像が適する
  • T1強調像やT2強調像、またSTIRも皮髄境界のコントラストが良好

側頭葉てんかんの分類

Ⅰ: 臨床発作が側頭葉の内側底部辺縁系から起始する
扁桃体海馬発作 amygdalohippocampal seizure→内側側頭葉てんかん mesial temporal lobe epilepsy
Ⅱ: 臨床発作が側頭葉外側の新皮質から起始する
外側側頭葉発作 lateral temporal seizure→外側(新皮質)側頭葉てんかんLateral neocortical temporal lobe epilepsy

 

内側側頭葉てんかん(mesial temporal lobe epilepsy: MTLE)

  • てんかん国際分類では側頭葉てんかんは側頭葉外側の新皮質から起始する外側型と側頭葉の内側辺縁系である扁桃体海馬から起始する内側型とに二分される
  • 内側側頭葉てんかん(mesial temporal lobe epilepsy: MTLE)は辺縁系を主座として起始する
  • 内側側頭葉てんかんは海馬硬化症を原因とする一群の疾患群を中心とするもの
  • 海馬・扁桃核切徐を行うことによって高率に軽快する
  • 薬物治療より、外科治療が有意差を持って有効
  • わずかながらも術後遅発性に再発を起こすものが認められているが、 術後2年までに発作をおこさなかった症例の 92%はその後も発作をみていないことから、術後早期の発作頻度が長期的な予後を決定するものと考えられる。
  • 小児および高齢者の外科治療成績も、成人例とほぼ同様
  • 内側側頭葉てんかん (mesial temporal lobe epilepsy, 以下 MTLE) の中でも海馬硬化(hippocampal sclerosis,HS)を伴う MTLE-HS の診断が重要であるのは、診断が確定すれば外科治療によって 60-80%の発作抑制が得られるから
  • 海馬硬化は神経細胞の脱落とグリオーシスによる海馬の萎縮を特徴としている。
  • 海馬のみならず嗅内皮質や海馬傍回、扁桃体にも硬化所見が認められることから内側側頭葉硬化(mesial temporal sclerosis,MTS)とも呼ばれる
  • 5歳頃以前に熱性痙攣重積などの既往があり
  • てんかんの家族歴を有することがある。
  • 発症後にいったん緩解するが、再発すると難治に経過しやすい。
  • 上腹部感覚などの前兆が単独でおこりやすい。
  • 発作症状の組み合わせと出現順序に特徴がある。(前兆・無動・意識の変容・口部自動症・発作後健忘など)
  • 棘波は両側性が多い。
  • 海馬以外の領域(扁桃体や海馬傍回など)の硬化性変化と側頭葉の広範な機能低下を認める。
  • 素材特異性の記憶障害を伴う。
  • 頭蓋内脳波の発作発射は、断続的棘波 periodic spikesで始まり、緩徐に進展して一定の拡延様式をとることが多い。
  • 術後、前兆が残りやすく、再発することがある。

臨床的特徴

  • 側頭葉内側構造、主として海馬に発作起始を有し、いわゆる辺縁系発作という特徴的な発作症候を示す
  • 臨床発作症候を詳細に聴取すれば診断が比較的容易である
  • MRIで脳波と一致する側の HSの存在

MRI所見

  • MRIでの HSの診断に FLAIR (fluid attenuated inversion recovery) やプロトン密度画像を用いた海馬の高信号化、T2 強調画像での萎縮や高信号化、側脳室下角の拡大の所見が有用
  • てんかん患者におけるVSRAD解析やSPM5解析の結果、解析法の違いによる影響があるが、いずれも、てんかん焦点の存在する場所と考えられる左内側側頭葉に容積減少領域を示すという報告もある。
  • 海馬体の内部に側脳室下角に近接して、髄液と等信号を呈する小嚢胞構造を認めることがある。胎生期海馬溝が深部に残存した遺残腔と考えられており正常変異である

発作間欠期の PETあるいは SPECT

  • 焦点の部位が低代謝、低灌流を示す
  • ベンゾジアゼピン受容体を可視化した iomazenil(IMZ) SPECT も有効

発作時 SPECT

  • 発作焦点が発作起始時に高灌流
  • 発作時SPECTは発作開始直後に静注を行なわなければならないため、難度の高い検査法であるが、診断率は高い

手術法

    標準的側頭葉切除術、選択的扁桃体海馬切除術、前内側側頭葉切除術があり、選択的扁桃体海馬切除術が基本的な方法

海馬硬化症(hippocampalsclerosis)

  • 側頭葉てんかんの原因疾患として最も多くを占める
  • 扇桃核硬化など側頭葉内側病変を総称して内側側頭葉硬化と呼ぶこともある
  • 病理学的には、海馬、扁桃体から海馬傍回に及ぶ神経細胞脱落、グリオーシスから成る
  • 最も障害されやすい部位がCA1領域の錐体細胞層で、次いでCA3、C A4、歯状回頼粒細胞層であり、CA2、海馬台はや神経経細胞脱落、グリオーシスから免れることが多い
  • 特徴的な画像所見としては、片側海馬の萎縮、T2強調像やFLAIR像での海馬領域の高信号域がある
  • そのほか,海馬傍回の皮質白質境界の不鮮明化、海馬指の脳室面への凹凸の消失などが挙げられる
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遠隔画像診断した疾患:悪性末梢神経鞘腫瘍:Malignant peripheral nerve sheath tumor (MPNST)

頻度

一般成人には0.001% neurofibromatosisの患者には4.6%に見られる

Ducatman BS, Cancer. 1986;57(10):2006-2021.

性差、好発年齢

  • 20-50歳
  • neurofibromatosisの患者は早い段階から見られる(平均32歳)
  • 80% in neurofibromatosis cases are men
  • 56% of patients with sporadic tumors are men

半数は神経線維腫症(neurofibromatosis, von Recklinghausen症)に合併して起こるとされるが、残りはこれとは無関係にde novo に発生するとされている

Ducatman BS, Cancer. 1986;57(10):2006-2021.

四肢に好発し、数か月で大きくなる無痛性腫瘤

疼痛、運動障害、感覚障害がみられることがある。

Von Recklinghausen‘s diseaseの有無にかかわらず、様々なneuronal tumorsの組織形成はneural crest cells の分化の違いによる神経堤障害の概念に基づく。

Neural crest cellsは、 melanocyte, adrenal medulla, root ganglia, Schwann cellsなどに分化する。

Bolande RP. Human Pathology. 1974;5(4):409-429.

副腎由来の褐色細胞腫とMPNST、 ganglioneuromaとMPNSTなどのいわゆるcomposite tumorsがあり、この概念を支持している。

WHO の分類でも末梢神経由来の悪性腫瘍が必ずしもSchwann 細胞のみの増殖からなるのではなく、神経周膜細胞などの関与も考えられることから、悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nervesheath tumor)を含んだ広い内容を示す疾患名を用いている

MRI所見

  • 斑状の造影効果、内部の出血、壊死 (symptomatic patients 7/7, asymptomatic patients 3/43)
  • asymptomatic 40 patients had tumors of relatively homogeneous structure on T1- and T2-weighted images before and after contrast enhancement.

Friedrich RE. Anticancer Res. 2005 May-Jun;25(3A):1699-702.

病理所見

  • HE所見
  • 悪性神経鞘腫の組織学的特徴は,長紡錘形の腫瘍細胞が束状,扇状に密に配列し,核の柵状配列を示さず,間質が粘液性となって腫瘍が離開し波状になる.
  • 核は分裂像を示し,クロマチン量が増量し,異型性が出現する.
  • 免疫組織学的染色
  • S-100蛋白,NSE 抗体が高率に陽性.
  • デスミン,ビメンチン,アクチン,ミオシンに対する抗体が陰性であることが,補助診断.
  • S-100蛋白の陽性率は,50~90%である.

治療

  • 広範切除が最も有効であるが,それが困難な場合,確立された治療方
  • 法はなく予後不良である。
  • 放射線抵抗性とされているが,完全切除不能例に術後照射をすすめる報告もある。
  • 化学療法:報告例が少なく治療法として確立されていない。

予後

  • 5生率 43.7%
  • 再発  40% with local recurrence
  • 転移  Lung, bone, pleura, and retroperitoneum
  • Regional lymph nodes rare
  • Tumor tends to spread along nerve sheath and may enter the subarachnoid space