主に小円形細胞から成る卵巣の腫瘍は、比較的まれである。
大きく分けると2つのtypeがある。
- Ovarian small cell carcinoma of hypercalcemic type
若い女性に発生する高度悪性卵巣腫瘍で、高カルシウム血症を伴うことが特徴である。 - A neuroendocrine small cell carcinoma, so-called small cell carcinoma of pulmonary type
閉経後の女性に見られ、肺でみられる小細胞癌と同様の腫瘍。より頻度が少ない。
Ovarian small cell carcinoma of pulmonary type
Neuroendocrine small cell carcinoma(肺の小細胞癌と同一)は卵巣にも発生する。
WHO分類では肺型の卵巣の小細胞癌(ovarian small cell carcinoma of pulmonary type)と呼ばれる。
11 cases のreportと症例報告が散見されるのみで、非常に稀な腫瘍である。
bilateral 6例 unilateral 5例
VIII. 起原不明の腫瘍 tumours of uncertain origin
小細胞癌 Small cell carcinoma
ウォルフ管起原と考えられる腫瘍 Tumour of probable wolffian origin
類肝細胞癌 Hepatoid carcinoma
扁平上皮癌 Squamous cell carcinoma
卵巣腫瘍の組織分類(卵巣腫瘍取扱い規約,1990年)
VI. Miscellaneous tumors その他の腫瘍
Small cellcarcinoma , hypercalcaemic type
Small cellcarcinoma , pulmonary type
Large cell neuroendocrine carcinoma
Hepatoid carcinoma
Primary ovarian mesothelioma
Wilms tumour
Gestational choriocarcinoma
Hydatidiform mole
Adenoid cystic carcinoma
Basal cell tumour
Ovarian wolffian tumour
Paraganglioma
Myxoma
Soft tissue tumor not specific to the ovary
Others
卵巣腫瘍の組織分類(WHO分類,2003年)
病理所見(Small cell carcinoma , pulmonary type)
- 通常、solid tumorとしてみられ、嚢胞変性や、出血、壊死がみられることもある。
- N/C比が高く、クロマチンに富んだ核を持つ小~中型の細胞。
- 大量の壊死と核濃縮と共に、Nuclear moldingはしばしば存在する。
- 組織学的特徴が肺小細胞癌と同一である。
- Surface epithelial-stromal tumor(endometrioid adenocarcinoma や Brenner tumor など)の構成要素を持っていることが多い。
- 報告が少なく、特徴的な免疫染色所見は不明であるが、anticytokeratin antibodies, EMA, and neuroendocrine markersに陽性になる。
Eichhorn JH. Am J Surg Pathol 1992; 16: 926–938.
予後と治療
非常にaggressiveな腫瘍で、長期の追跡が可能であった7例の患者のうちの5例は、1~13ヵ月で死亡した。
最適治療はわかっていない、しかし、通常の卵巣癌の化学療法には抵抗性であり、肺小細胞癌の化学療法療法がより適当だと示唆された。
Eichhorn JH. Am J Surg Pathol 1992; 16: 926–938.
まとめ
Ovarian small cell carcinoma of pulmonary typeの画像所見の報告はみられていないが、組織学的には、肺小細胞癌と同様であるため、同様の画像所見、生物学的な振る舞いが予想される。
本症例の多発するリンパ節腫大や内部の出血壊死などは、特徴的な所見である可能性がある。