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fuyu59

遠隔画像診断した疾患:リンパ脈管筋腫症(Lymphangioleiomyomatosis;LAM)

概念・定義

  • 1940年前後から記載され始め、Frack ら (1968) により初めて pulmonary lymphangiomyomatosis という言葉が用いられる
  • Corrin ら (1975) により 28 例の臨床病理学的特徴がまとめられた。
  • Carrington ら (1977) が本疾患の生理学的、病理学的、画像の各所見の関連性を詳細に検討した際から以降、lymphangiomyomatosis 、 lymphangioleiomyomatosis ともに用いられ続けている。
  • 本邦においては、山中、斎木 (1970) が 2 例の剖検例と 1 例の開胸肺生検例を検討し、び慢性過誤腫性肺脈管筋腫症として報告したのが最初。
  • 症例の集積にともない、後腹膜や骨盤腔リンパ節病変が主体で肺病変が軽微である症例の存在も認識されるようになり、「肺」を病名から除いてリンパ脈管筋腫症 lymphangioleiomyomatosis という病名で包括して呼ばれるようになってきている。
  • 主として妊娠可能年齢の女性に発症する稀な疾患
  • 労作性の息切れ、血痰、咳嗽、乳麋胸水などの症状や所見を認める。
  • 自然気胸を反復することが多く、女性自然気胸の重要な基礎疾患のひとつ。
  • 常染色体性優性遺伝性疾患の結節性硬化症 tuberous sclerosis complex (TSC)では女性TSC症例の 26~30% に合併。

結節硬化症とLAM

  • 1/3は常染色体優勢疾患であるが、2/3は突然変異で生じる弧発例。

疫学

  • 稀な疾患であるため有病率や罹患率などの正確な疫学データは得られていない。
  • 日本でのLAMの有病率は100万人あたり約1.2~2.3人と推測。

病因

  • TSC の病変の一つとして LAM を合併する症例 (TSC-LAM、TSCに合併したLAM) と、TSC の臨床的特徴を認めずLAM 単独の症例 (sporadic LAM、孤発性LAM) とがある。
  • 両者とも、癌抑制遺伝子として機能する TSC 遺伝子の変異が LAM 細胞に検出され、Knudson の 2-hit 説が当てはまる癌抑制遺伝子症候群のひとつ。
  • TSC 遺伝子には TSC1 遺伝子と TSC2 遺伝子の2種類があるが、TSC-LAM 症例は TSC1 あるいは TSC2 遺伝子のどちらの異常でも発生しうるが、sporadic LAM 症例では TSC2 遺伝子異常により発生すると考えられている。
  • TSC 遺伝子異常により形質転換した LAM 細胞は、病理形態学的には癌と言える程の悪性度は示さないがリンパ節や肺に転移し、肺にはびまん性、不連続性の病変を形成する。
  • 片肺移植後のドナー肺に LAM が再発した症例では、残存するレシピエント肺からドナー肺に LAM 細胞が転移して再発したことを示唆する遺伝学的解析結果が 2 施設より報告。

症状・病態生理・診断

  • 大部分は閉経前の女性に発症
  • 平均発症年齢は 30 歳前後:思春期前の少女で発症した報告や、閉経後に他疾患の検索中に偶然診断される症例も存在。
  • TSCの場合には男性での肺 LAM 発生の報告がある。

症状・所見

  • 胸郭内病変による症状および所見
  • —労作性呼吸困難(74%)*
  • —気胸(53%)
  • —咳(32%)
  • —痰(少量)(21%)
  • —血痰(8%)
  • —乳糜胸水(7%)
  • 胸郭外病変による症状および所見
  • —乳糜腹水(5%)
  • —後腹膜腔~骨盤腔のリンパ脈管筋腫(lymphangioleiomyoma)や腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma)に伴う諸症状(腹部膨満感,腹痛・腹部違和感,下肢のリンパ浮腫,血尿など)
  • LAM 細胞の増殖により肺末梢血管やリンパ管に閉塞、うっ滞、破綻が生じ、血痰や乳糜胸腹水が生じると推測される。
  • 嚢胞は、LAM 細胞の増殖による細気管支の閉塞と air trapping 、LAM 細胞からの MMP-2やMMP-9の産生、等により形成されると推測される。
  • 気胸は、胸膜直下に生じた嚢胞が破綻することにより頻回に合併すると考えられる。
  • 聴診を含めた理学所見では、一般に特徴的なものはないが、TSC を合併している場合には、顔面の血管線維腫、爪囲線維腫、白斑などの皮膚病変を認めることもある。
  • 呼吸機能検査では、拡散能の減少、閉塞性換気障害が最も多く認められる

確定診断

  • 経気管支肺生検や胸腔鏡下肺生検が必要。
  • 乳糜胸水や腹水中にはLAM細胞クラスターが検出され、生検を行わなくてもLAMの診断が可能な場合がある。

画像所見

高分解能 CT :

  • 境界明瞭な薄壁を有する囊胞(数mm~1cm 大が多い)が,両側性,上~下肺野に,びまん性あるいは散在性に,比較的均等に,正常肺野内に認められる.
  • Multifocalmicronodular pneumocyte hyperplasia(MMPH)病変に相当して辺縁のはっきりしない小粒状影が認められることがある.
  • 気胸
  • 胸水貯留
  • 縦隔リンパ節腫大
  • 胸管の拡張

治療

  • 無治療でも肺機能や画像所見の著しい悪化を認めない症例もある。
  • プロゲステロン療法、性腺刺激ホルモン放出ホルモン療法:有効例でもいずれも乳び胸例が多い。無効であったとする報告も多い。
  • 卵巣摘除術:プロゲステロン療法に悪化する症例に対して適応を考える。
  • 外科的治療:気胸を繰り返す症例
  • 肺移植:呼吸不全に至った症例では酸素療法が必要となり、肺移植が適応

経過・予後

  • 平成15・16年に行われた日本の全国調査では、全体として10年後の生存率は76%
  • 労作性の息切れを契機にLAMと診断され症例(10年後の生存率は60%、15年後の生存率は47%)
  • 自然気胸を契機に診断された症例(10年後の生存率は89%、15年後の生存率は89%)