カテゴリー別アーカイブ: 遠隔画像診断

fuyu59

遠隔画像診断した疾患;精索静脈瘤(varicocele)

疫学

一般男性の15%に精索静脈瘤が認められ、男性不妊症患者の40%以上に認められる。(治療可能な男性不妊の一番の原因)

病理学

蔓状静脈叢は通常、精巣の温度を35度程度に保つために働いているが、精索静脈瘤の患者では37度ほどにもなる
徐々に増悪する傾向がある

原因

プライマリーとセカンダリーに分けられる
プライマリー精索静脈瘤
ほとんどの精索静脈瘤がプライマリーで、静脈の弁の欠損によって引き起こされる

セカンダリー精索静脈瘤
腹腔内腫瘤や、左腎静脈血栓、門脈圧亢進症などによって精巣静脈の厚の上昇によって引き起こされる
両側静脈瘤はまれ ( ≈ 15 %)、右側のみはもっとまれ( ≈ 5%).

臨床症状

無症状
陰嚢内mass(こりこりしたものを触れるなど)
陰嚢腫大
陰嚢痛
精巣萎縮
男性不妊

画像診断

超音波
蔓状静脈叢の3mm以上の拡張、特徴的な蛇行した所見が見られる
バルサルバ法で逆流が確認できる

CT
造影で拡張した精巣静脈が描出できる

MRI
拡張した静脈叢が描出でききる
low flowならT1強調像で等信号、T2強調像で高信号
high flowなら信号欠損として描出される
造影すれば造影される。
@普段あまりこの分野は画像診断の対象になることがないと思われるので、まずは正常像を正しく認識することが重要と思われる。正常が頭に入っていれば自ずと診断できる。

治療

男性不妊の際に考慮される
高位結紮術、顕微鏡低位結紮術、腹腔鏡下結紮術、経皮的塞栓術

fuyu59

遠隔画像診断した症例;子宮筋腫の赤色変性(Red degeneration of uterine leiomyoma)

子宮筋腫の変性

ヒアリン変性;大きい筋腫の場合、内部の血流が低下し、ヒアリン変性をきたすことがある
石灰化;閉経後によく見られ、筋腫にカルシウムが沈着する。
浮腫
粘液性変性
嚢胞変性
赤色変性

特殊型

1) cellular leiomyoma (富細胞平滑筋腫)
2) epithelioid leiomyoma (類上皮平滑筋腫)
3) bizarre leiomyoma (変形平滑筋腫)
4) lipoleiomyoma (脂肪平滑筋腫)

子宮筋腫赤色変性

腫瘤辺縁の静脈血栓とされる血行障害による出血性梗塞・壊死が病態の本態
その名の通り、肉眼像で割面が暗赤色を呈することが特徴。
妊娠中に子宮の増大に伴い生じて急性腹症として発症することが多い。出産後や中絶後にも認められ、経口避妊薬の服用もリスクファクター。自分が経験したことがあるのはすべて、妊娠に関連するものです。

症状は疼痛、圧痛、悪心嘔吐。
NSAIDSによる保存的療法で改善することが多いが、症状が強い場合は手術。
感染の合併が多い。感染経路は主として内膜からの感染であり、 粘膜下筋腫に起こることが多い。

炎症の波及により流産の原因になることもある。その際、解剖学的な頸管無力症の評価してあげると、主治医に喜ばれる(頸管長の測定)

子宮筋腫の赤色変性の画像所見
基本的にT2強調像で真っ黒でない筋腫は良性とは言い切れない。
赤色変性は出血壊死を反映し、T2強調像では内部は不均一な信号を呈する。
T1 強調像では全体が高信号に描出され、辺縁部がより高信号で内部に行くに連れて薄まっていく所見は特徴的。
T1強調像で高信号だったり。T2強調像で低信号、SWIやT2*強調像で低信号に血栓自体が描出できるとしている文献もある
出血壊死なので造影によって造影されない。もともとT1強調像で高信号なので、Dynamic studyをしたほう良い。subtractionをすればだれでも分かる画像になる。

fuyu1

遠隔画像診断した疾患;尿膜管癌(Urachal cancer)

尿膜管癌の好発部位:膀胱頂部
頻度:全膀胱腫瘍の0.14%-2.7%
好発年齢:40 -70歳代
男女比: 3: 2

胎生期に臍帯と膀胱頂部を結ぶ尿膜管は出生時には退化して正中臍索となる尿膜管の退
化が不完全なことがある。
尿膜管遺残はその形態により尿膜管開存、尿膜管洞、尿膜管嚢胞、尿膜管憩室
尿膜管由来の良性腫療:腺腫、線維腫、線維腺腫、過誤腫(いずれも非常に稀)
腺癌が90%、膀胱がんの腺癌のうち34%
ムチン産生性腺腫の場合は石灰化を伴うことが多い

尿膜管癌の画像所見

充実性、嚢胞性のいずれもあり得る。
CTでは腫瘍内部は不均一で低吸収
MRIでは腫瘍内部は T1強調画像で低信号、 T2強調画像で不均一な高信号
感染を伴った尿膜管嚢胞と尿膜管癌の鑑別は困難(泌尿器のカンファレンスに膿瘍か癌かでよく症例が出された記憶がありますが、鑑別困難だった気がします。)

尿膜管癌の臨床症状:腹膜外に発生するため無症状のことも多い。あるときは肉眼的血尿、膀胱刺激症状、粘液排出、尿混濁など

尿膜管癌の予後は通常の膀胱癌より不良

膀胱頂部の腫瘍の鑑別:膀胱癌、膀胱粘膜下腫瘍(傍神経細胞腫、平滑筋腫)、尿膜管腫瘍

fuyu68

遠隔画像診断した疾患;上腕二頭筋腱長頭腱断裂(Rupture of the Biceps Tendon )

正常

  • 起始部は長頭と短頭に分かれる。
  • 長頭は肩甲骨関節上結節~上腕二頭筋長頭腱として関節包内、上腕骨結節間溝~大部分は橈骨粗面に停止。一部は尺骨の前腕筋膜に停止。
  • 短頭は肩甲骨烏口突起~大部分は橈骨粗面に停止。一部は尺骨の前腕筋膜に停止。
  • 支配神経は筋皮神経。
  • 前腕の屈曲と回外。
  • 屈曲時には上腕筋、烏口腕筋などと共に協調して働く。
  • 前腕屈曲位の拮抗筋は上腕三頭筋。
  • 前腕の回外は回外筋、腕橈骨筋などと協調して働く。

上腕二頭筋腱長頭腱断裂

  • 上腕二頭筋は長頭と短頭の2つからなり、炎症や断裂のほとんどが長頭側でおこる
  • 断裂した場合、断裂直後は肩から上腕にかけて痛みがでるが、痛みは数日で落ち着くことがほとんど
  • その後、皮下出血や腫脹がみられ、力こぶの出来る位置がずれる
  • 上腕二頭筋長頭腱炎:野球やバレーボール・水泳。中高年の人では、特に運動をしていなくても肩関節周囲炎の一つの症状として発生
  • 炎症や刺激が繰り返し起こることで、徐々に弱化していき変性した結果、断裂に至る場合と一度の外傷で断裂に至ることがある。
  • 上腕二頭筋長頭腱が断裂した場合、受傷部以外の上腕二頭筋腱と肘関節屈曲に働く他の筋群があるため、若干の筋力低下あるが、機能上は問題がなく、年配者では完全に断裂してもそのままの状態で保存的治療が施されることがほとんど。
  • MRIでは長頭腱の欠損または狭小化が認められる。断裂した腱が遠位側に退縮すると横断像で結節間溝に腱が同定できなくなるが細い腱が癒着して残っていることもある
fuyu1

遠隔画像診断した症例:副骨(accessory ossicle)と種子骨(sesamoid bone)

  • 副骨:発達段階の正常変異。主骨の骨化中心から発生した二次骨化中心として出現。
    主骨の近傍もしくは、やや離れる。裂離骨折との鑑別が問題となりやすい。
  • 種子骨:5-10mmの円形から楕円形の小骨で、固有の骨化中心から発生。種子骨は近傍の靭帯内にある。症状を呈する頻度は副骨よりも低い。
  • 人口の約3%で足関節周囲に複数の副骨や穂子骨が同定される。

外脛骨

  • 最も頻度が高いのは外脛骨(4~21%)で舟状骨の内側に見られる。両側のことが多い

三角骨

  • 距骨背側部の骨化は8~13歳で開始し、約1 年で癒合が完了する。
  • 5-10%の頻度で分離したままの状態となり、 三角骨(os trigonwn)とよばれる。
  • 繰り返す背屈運動によるimpingementが原因で痛みが生じることがある(足関節後方インピンジメント症候群)
  • 定義では三角骨に限らず、足関節後方に存在する骨・軟骨組織がインピンジメントすることで生じる疼痛や可動域制限を引き起こす症候群。
  • サッカー選手やバスケットボール選手、バレエダンサーに多い(クラシックバレエが多い)
  • 裂離骨折とのは三角骨は通常円形もしくは楕円形であり、骨折時にみられる距骨外側結節と
    の関節側の不整像がみられない点が鑑別のポイント。(骨皮質のあるなしも)
  • テーピングや包帯などで足関節の底屈を制限することにより症状が改善することが多いが、再発を繰り返すなど慢性的経過を呈するものではope

外果の二次骨化中心の癒合不全

  • 外果の二次骨化中心は生後1年ほどで出現。この二次骨化中心の癒合不全はos subfibulare
    とよばれる。前距腓靭帯の付着部であるので、大半に症状をきたしATFL断裂の頻度が高い。

自分が今回経験したものは、三角骨でした。臨床からは剥離骨折疑いで依頼を頂きました。