下大静脈の発生異常により、右尿管が下大静脈の背側を走行する発生異常
下大静脈の発生異常
- 下大静脈腎後部
・右後主静脈の遺残:下大静脈後尿管(retrocaval ureter)
・右上主静脈の遺残:正常
・左上主静脈の遺残:左側下大静脈(left-sided IVC)[0.2~0.5%]
・両上主静脈の遺残:重複下大静脈(double IVC, duplicated IVC)[1~3%]
- 下大静脈腎部
胎生期に下主静脈間吻合のレベルで、大動脈を取り囲む静脈輪が形成される。
・腹側枝が遺残:正常の左腎静脈
・背側枝も遺残:circum aortic renal vein
・背側枝のみ遺残:左後大動脈腎静脈(left retro-aortic renal vein)
- 下大静脈腎前部
・下大静脈肝部欠損により、右上主静脈が全長にわたり遺残:奇静脈連結(azygos continuation)[0.6%]
下大静脈後尿管の病態
- 大静脈の異常によるものと考えられており、ほとんどが右側に起こる
- 尿管が下大静脈と椎骨に挟まれて圧迫するために、尿の流れが障害されて、それより近位側は水腎・水尿管症になりやすい。
- 尿路感染症や結石を合併しやすい。
下大静脈後尿管の画像診断
IVP・CT・CTU⇒水腎症の存在・尿管の走行。単純でもthinslice CTで尿管の走行を同定できれば診断できる。CTUやIVPを行う際は 造影剤が停留しがちなので、腹臥位などにさせてみてもいいかもしれない。
高磁場MRIがあればRAREなどでとるstaticMRUが有効な可能性がある。
下大静脈後尿管の治療方針
症状がなければ保存的
手術:
- 尿管切断、位置整復後の端々吻合(尿管に狭窄がある症例でも使える。術後の狭窄有り)
- 下大静脈切断結紮、尿管位置整復が行われることもあった(両側下肢の浮腫などもあり)
- 尿管膀胱新吻合術
- 腎盂尿管移行部吻合術、腎盂形成術(成功率も尿管尿管吻合術よりも高い)
- 腎摘(腫瘍や巨大な結石を伴うもの、機能のないものなど )
- 下大静脈の切断、尿管の位置整復後の再吻合(術後の成績は良好)