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遠隔画像診断した疾患:閉鎖孔ヘルニア(Obturator hernia)


  • •閉鎖孔の外上方で、後腹膜腔から大腿に向けて閉鎖膜を貫いて走行している閉鎖管を通って大腿内側に脱出するもの。
  • 60歳以上の高齢者が80%
  • 男女比は 1:20~25 と圧倒的に女性に多い。(やせ型の多産婦に多い。)
  • 嵌頓臓器はほとんどが、回盲弁から100cm以内の小腸。
  • 一般の腸閉塞のうち閉鎖孔ヘルニアが原因となることは0.4%と非常に稀。
  • ヘルニアは大腿の深部に突出するので、通常腫瘤として気づかれることはほとんどない。
  • ヘルニア門が小さく強靭であるため嵌頓を起こしやすく、嵌頓によって初めて症状が起こる。
  • 小腸の嵌頓型は50~78%が、腸管壁の一部が嵌頓する Richter 型嵌頓。
  • このため初期には不完全腸閉塞が生じて腹痛・嘔吐が出ても、自然環納が起こり症状が改善してしまうことがある。
  • 自然環納が起こらずに時間が経過すると完全腸閉塞に進展する。
  • 閉鎖管内を走行する閉鎖神経が圧迫されて、膝から大腿内側、時に股関節部に痛みが出現することがある。痛みは大腿を伸展・外転・外旋させたり、咳をさせると増強する(Howship-Rombergsign)。
  • 開腹歴のない高齢女性の腸閉塞では、大腸ガンによるものと、ヘルニアを考える。
  • 鼠径/大腿ヘルニアは身体所見で診断できる。閉鎖孔ヘルニアは、骨盤の閉鎖孔に腸管が嵌頓し腸閉塞で発症する。
  • 高齢で、低身長の痩せ形女性に多い。数年前までは、外表変化が全くないためベッドサイドで診断することは不可能とされてきたが、近年、CT で容易に診断できるようになり、さらに最近では、US による術前診断率が向上してきた。
  • 腸閉塞では、腹部の診察だけで済ませがちであるが、下着を下ろして、鼠径部のUS を行うことが必要である。鼠径靭帯のやや尾側で、外閉鎖筋と、恥骨筋の間に嵌頓腸管が見える。
  • 直腸診で圧痛のある閉鎖孔ヘルニアを蝕知できる。

Howship-Romberg 症状

•閉鎖神経圧迫症状による大腿内側におよぶ疼痛。

画像所見

•閉鎖孔外側に、径約1-2cm大の造影効果を伴わない腫瘤影を認める。

腫瘤は骨盤内の腸管と連続し、口側腸管の著明な拡張を認める。•

治療

  • ヘルニア環納・修復術、壊死腸管切除術。
  • 最近は腹腔鏡下手術による腹腔外からのアプローチが一般的

閉鎖孔(obturator foramen)

  • 骨盤腔の坐骨、恥骨と腸骨に囲まれる三角形の空隙
  • 骨盤腹膜、内閉鎖筋と外閉鎖筋で閉じられている

Richter(型)ヘルニア

  • 腸管壁の一部(通常は腸間膜対側)のみが嵌頓・絞扼する特殊なヘルニア
  • 腸壁ヘルニアとも呼ばれる
  • Scarpaの法則
  • 部位は大腿ヘルニアが最も多く(大腿ヘルニア軟頓の10-33%)、腸管は回腸が多い

Scarpaの法則

  • 腸壁全周の2/3以上が嵌頓すると完全腸閉塞を起こす
  • 1/3だけでは腸閉塞を起こさず鼠径部痛や大腿部痛だけを訴えることがある
  • 半周程度では不完全閉塞を起こす