概要・定義
・1862年von Recklinghausenにより初めて報告
・本症の遺伝形式は常染色体優性遺伝
・16番の染色体上に結節性硬化症の遺伝子の一つTSC2遺伝子が、1997年にVan Slegtnenhorstらによって9番の染色体上にTSC1の遺伝子があいついで同定される
・本症は全身の過誤腫を特徴とする全身性疾患で、古典的には、知能低下、癲癇発作及び顔面の血管線維腫(angiofibroma)を三主徴
・三主徴全てがそろうものは29%
・臨床症状の程度にはばらつきが多く、親子、兄弟例であっても症状の程度が同様とは限らない。
■疫学
・日本における結節性硬化症の頻度は、おおよそ人口7千人に1人の割合
・患者数は1万5千人前後
・結節性硬化症は常染色体優性遺伝性の遺伝病であるが、60%近くが弧発例
・本症の死因は、腎不全等腎病変、脳腫瘍等中枢神経系病変、次いで心不全が高頻度に報告
・10歳以上では腎病変が主な死因であるのに対し、10歳未満では、心血管系の異常(心臓の横紋筋腫(Cardiac rhabdomyomas)による心不全)が主な死因
・10代の主な死因としては、脳腫瘍(Subependymal Giant Cell Astrocytoma,SEGA)が特徴的
・40歳以上の死因では特に女性において腎病変と並んで肺のLymphangiomyomatosis(LAM)が特徴的に増加する
・痙攣発作が関与する死因は40歳未満がほとんどである。
■病因
・本症の原因遺伝子として、TSC2の遺伝子とTSC1の遺伝子が同定されている
■症状
皮膚症状
・白斑は生下時あるいは出生後早期に出現するが、その他の症状は思春期以降に著明になることが多い。
白斑(hypomelanotic macule)、顔面の血管線維腫(Facial Angiofibroma; FA)、爪下線維腫(ungual fibromas, Koenen tumor)、軟線維腫(Soft fibromas)、懸垂性軟属腫(Molluscum fibrosum pendulum)、Miliary soft fibroma、粉瘤(Atheroma)、頬粘膜、歯肉部の線維腫様増殖、歯エナメル質の多発性小孔(Dental enamel pits)なども認められる。
精神神経学的症状
痙攀発作と精神発達遅滞、自閉症などの行動異常
本症の70~80% にsubependymal nodulesが認められ、側脳室壁に好発する。そのうちの径が1cm以上とおおきく増大傾向のあるSubependimal Giant Cell Astrocytoma(SEGA)は本症に特徴的で、結節性硬化症患者の6%以上がSEGAをもっており、小児期から思春期にかけて急速に増大する事が多い。腫
心症状
心横紋筋腫は胎生期に出現し出生時にもっとも著明になる。
新生児期、乳幼児期における結節性硬化症の重要な死因のひとつとなるが、大部分は無症状で、加齢とともに縮小消退していく。
腎症状
嚢腫(cyst)、血管筋脂肪腫(Angiomyolipoma;AML)および腎癌(renal cell carcinoma)
腫瘍径が4cmを越える時には、腫瘍サイズが増大しやすく、自然破裂の確率が高くなる。腫瘍の発育は様々であるが、特に10代の腎腫瘍では急速に増大することが多く、突然後腹膜への大量出血を起こして、ショック症状に陥ることもある。
腎癌と結節性硬化症との関係は血管筋脂肪腫や、腎嚢腫ほどはっきりとはしていない。
その他extrapulmonary lymphangioleiomyomatosisとして、Lymphangiomatous cystsを認めることもある。
呼吸器症状
multifocal micronodular type 2 pneumocyte hyperplasia (MMPH) とpulmonary Lymphangiomyomatosis (LAM)
眼症状
網膜の多発性結節性過誤腫(multiple retinal nodular hamartomas)
網膜の白斑、虹彩脱色素斑。
血管症状
大血管の動脈瘤。
腎動脈や肺動脈、肝動脈などの中型の動脈血管の血管壁の中膜が肥厚し、弾性板が欠如し、硝子化をおこして内腔の狭窄をひきおこすことがある。
骨症状
骨病変は本症では高頻度に出現し(45~66%)、頭蓋骨、脊椎、骨盤にはしばしば骨硬化像が認められる。
手や足の骨、特に、中手骨や中足骨では、周囲に骨の新生を伴った、嚢腫様の病変が認められる。
肝症状
血管筋脂肪腫や血管腫が多い。その他、肝腺腫などを認める。
消化管症状
頬粘膜、歯肉、舌底面、口蓋にも線維腫などの腫瘍が認められる。歯にenamel defect (enamel pit)と呼ばれる小さなエナメル質の欠損を高頻度に認める。
大腸の壁の一部が肥厚し、内腔の狭窄をおこすことがある。直腸の線維腫性ポリープが認められる。
■診断
遺伝子診断が最も確実な診断方法と考えられる
結節性硬化症のConsensus Conferenceで批准された診断基準(Roach ER et al. J Child Neurol 13:624-628,1998)と日本皮膚科学会の提唱する結節性硬化症の診断基準及び治療ガイドラインがある。
http://atlasgeneticsoncology.org/Tumors/LymphangioleiomyomaID5868.html
LAMがあり、AMLがあり、骨病変がある症例で、縦隔に多発するmassがあった。単純CTなので詳細な質的診断はできないのであるが、個々を参照すると、extrapulmonary lymphangioleiomyomaの可能性もあるのかなと思った。
もちろん、結節性硬化症+metaや悪性リンパ腫を合併したことが鑑別になるとは思いますが。