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遠隔画像診断した疾患;嚢胞性線維症( cystic fibrosis;CF)


  • 嚢胞性線維症( cystic fibrosis;CF)は全身の外分泌腺機能障害不全に基づく疾病
  • 特に膵と肺の病変の頻度が高い。
  • 膵臓と気道の粘液分泌線に極めて粘調な分泌液が生産されこれを閉塞することと、汗中への過剰の電解質が失われるのが特徴である。

疫学

  • 白色人種の中ではもっとも頻度の高い重篤な常染色体劣性の遺伝性疾患(出生児約2,500人あたり1人)
  • わが国では発症率は出生10万~35万人あたり1人程度

歴史

  • 1938年:膵臓と肺を冒す疾患として初めて記載された。
  • その後全身の外分泌臓器の疾患であることが明らかにされた
  • 1989年:cAMP依存性Cl-チャネルcystic fibrosis transmembrane conductance regu1ator(CFTR)をコードする原因遺伝子が単離された。
  • 日本のCF遺伝子変異が欧米のそれとは異なることが確認されており、欧米人用のスクリーニングシステムを用いても変異が検出されないと考えられる。

臨床病状

  • n難治性の下気道感染症と末期の呼吸不全を伴う呼吸器病変,膵外分泌機能不全, 胎便イレウスなどの消化管病変が代表的なものである。さらに、CFではそのほかにも胆管,汗腺,生殖器など全身の外分泌腺臓器が障害される。

呼吸器症状

  • ほぼ全例のCF患者に認められる。
  • 全CF症例の死因の約95%を肺病変が占める。

細気管支レベルの粘液の貯留、塞栓を形成

細菌(とくに緑膿菌と黄色ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌)が粘液栓に定着

持続性の感染や炎症が成立する。

気管支は拡張し、そこにさらに粘液が貯留する

  • 悪循環が絶えることなく繰り返される。その結果、気管支拡張は増悪し、肺高血圧や肺性心を伴った呼吸不全をきたし、多くが死に至る
  • 気道病変は出生後に生ずるものであり、過分泌や異常な気道分泌物の貯留が先行し、感染の成立は二次的な病態である。

画像所見

  • 病態を反映して生後一ヶ月頃より肺尖部と背側の肺葉を中心にfingerlikeな粘液栓が見られるようになる。
  • 6ヶ月を過ぎる頃にはほぼ全例に気管支の円柱状、嚢胞状拡張を認める。拡張した気管内に粘液が駐留しair-fluid levelが見られることもある。
  • また、炎症を反映して肺門から広がる線状陰影や気管支壁の肥厚(peribronchial cuffing )が見られる。
  • 炎症により二次的に肺門、縦隔リンパ節の腫大を認める。
  • 肺の正常構造は破壊され肺気腫様のbullaも認められ、肺は過膨張する。
  • 肺動脈圧は上昇し肺動脈は拡大する。
  • 斑状の濃度上昇が認められ、部分的な無気肺を反映していると思われる