- 一酸化炭素は無色・無臭のガスである。
- 1時間程度の暴露では、600~700ppmから酸素不足による症状が出始め、1000ppm以上になると重篤な症状が現れ、1500ppm以上では生命に危険が及ぶ。
- 中毒学的薬理作用としては、一酸化炭素は酸素よりも約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすいため、一酸化炭素ヘモグロビンを形成し、オキシヘモグロビンの形成を妨げる。また、オキシヘモグロビンの解離曲線を左方移動させ、オキシヘモグロビンによる組織への酸素供給も阻害する。つまりは、組織での酸素不足による臓器障害が病態の主体である。
- さらに、ミオグロビンと結合することにより、心機能を低下させ、低酸素状態をより悪化させる。加えて、ミトコンドリアなどのチトクローム酵素と結合して組織呼吸自体も障害する。
- 低酸素に対して感受性の高い中枢神経、心筋が特に障害を受けやすいが、全身が低酸素の障害を受ける。
診断
- 血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度の測定によってなされる。CO-Oximeterや吸光度測定法によって測定できる。
症状
- 急性期の症状といったん意識が完全に回復した後、一週間前後してから見られる、見当識障害や錐体外路症状などの多彩な神経症状を示すことがある(遅延型)。
- 急性一酸化炭素中毒に引き続き、遅延型白質脳症が起こる頻度は低く、0.06% ~2.8%と報告されている(2.3)。中年以降の患者に見られることが多い(3)。
- 遅延性白質脳症の病因はいまだ明らかでない。
- 白質病変の重症度は、一酸化炭素暴露の程度、一酸化炭素ヘモグロビン濃度、アシドーシスと相関しない(4)
- 単純に低酸素血症による障害だけでなく、一酸化炭素のミトコンドリアなどのチトクローム酵素と結合することによる直接的な細胞障害効果の関与している可能性を示唆される(5)。
- 痴呆、失調症、パーキンソン症候群、歩行障害と無言(2)。
- 最も遅延型白質脳症に特徴的なのは大脳白質の脱髄及び、壊死であり、臨床症状との相関関係が認められている(6)。
一酸化炭素に関連した白質病変は3群に分類。(もちろん、オーバーラップする)
- 第1群は、半卵円中心と半球間交連で複数の小さい壊死性病巣を認めるもの。
- 第2群は、脳室周囲の深部白質に広く認められるもの。組織学的には軸索の障害と多数の炎症細胞が見られる。
- 第3群は、深部白質での脱髄であり、前頭葉に見られることが多い。脳梁、内包に見られることもある。皮質下U繊維は比較的保たれることが多い(6.9)。
- 上記の病理学的所見を反映して、CTにおいては白質に低吸収域が見られ(7)、MRIにおいてはT2強調画像で白質に高信号が見られる(10.11)。
画像所見のまとめ
- 脳室周囲白質と半卵円中心で両側性対称性の瀰漫的な異常信号。しばしば脳梁、内包、外包に達する。
- 皮質下U繊維は保たれる傾向がある。
- 淡蒼球壊死は必ずしもみられるわけではない。また両側性である必要はない、片側性の場合もある(13)。
- 視床と被殻にT2協調運動画像で低信号を認める。:これは非ヘム鉄の軸索輸送の中断が白質病変によって引き起こされ、基底核と視床で鉄の沈着が沈着するためと考えられている(15)同じような病変が多発性硬化症や脳梗塞の患者で報告されている(14.16)。
治療
- すみやかに100%酸素投与を開始して、一刻も早くCOを洗い出し、組織低酸素状態の時間を短縮することである。
- 高圧酸素療法は昏睡、痙攣、その他神経学的所見、心筋虚血をきたしている重症患者、妊婦の場合は考慮されるが、準備にかかる時間を考慮すると100%酸素投与が現実的。
予後
- CO中毒による遅延性白質脳症の予後は、比較的良好である。
- 75%は1年以内で回復する。しかし、一部には持続性の後遺症がみられる(2)。
References
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