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遠隔画像診断した疾患;左上大静脈遺残(PLSVC: persistent left superior vena cava)

ネタ切れしてきたので、読影中にみた疾患の説明をシリーズ化します!
これなら、定期的にネタができて、勉強にもなり一石二鳥です。
個人情報の関係もあるんで、症例提示はしません。あくまで疾患の説明です。

第一弾は左上大静脈遺残(PLSVC: persistent left superior vena cava)です。

  • 頻度は一般剖検例において 0.4% 程度、先天性心疾患の患者では 2~4%に合併
  • 胎生期には上大静脈は左右に2本あり、本来であれば発生の過程で右側で一本に合流してゆく。胎生期の左前主静脈が何らかの原因で閉塞しなかった場合に発生
  • 左右両方に上大静脈がある場合は重複上大静脈
  • PLSVCは冠静脈洞(coronary sinus)に開口することがほとんど
  • 左心房に直接還流する例もあり、PLSVC 全体の中でも 1~4% ときわめて少ない
  • coronary sinusは拡大していることが多い(10mm以上)。
  • 左上肢の点滴ラインよりマイクロバブルの入った液体を注入するとcoronary sinusに泡が出現することで確定診断
  • PLSVCそのものは治療が必要ではない
  • PLSVC の大多数は臨床的に無症状であり、左鎖骨下静脈からの心臓ペースメーカー、もしくは中心静脈カテーテル挿入時に偶然発見されたという報告が多い
  • 体外循環をまわす際などの手順が異なるので注意
  • 冠静脈洞に開口している場合、CVカテーテルを留置すると、血栓を形成することがある
  • まれに、拡大したcoronary sinusのLA側に窓状の欠損をともない、そこを経由するL→Rシャントを併発するものがある

今回経験した症例もCVカテーテルのカテ先の確認したところ、位置がおかしいとCTの依頼がされました。冠静脈洞に開口している場合、CVカテーテルを留置すると、血栓を形成することがあるとされている文献がある旨を主治医に伝えたところ、念のためCVカテーテルを留置し直すこととなりました。
経験的にもカテ先に血栓がついていることはよく経験されるので、留置し直す方がリスクが少ないと思われました。
解剖の正常変異や挿入物の位置異常に関しても読影するようにしています。

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遠隔画像診断医に絶対必要なもの

以前、足の裏にイボができて、皮膚科に液体窒素で焼いてもらうために受診したことがあります。最初3つ見られており、いちばん大きな1つはきれいになくなってしまいましたが、小さかった2つが若干残っていたので、久々にもう一度焼いてもらおうと受診した時のことです。大きなイボがあったことを、皮膚科の先生は全く覚えてない様子でした。
画像診断医が画像で勝負するよう、皮膚科医にとっては皮膚の所見が重要な診断根拠となっていると思っていたので意外でした。

自分がみた画像をどれくらい覚えているかは人によると思いますが、素晴らしい画像診断医は数年前に診断した画像のことでも覚えていたりします。

他の科でも、自分がまだ医学部の学生だった頃に、小児外科の先生ですが過去の手術台帳のどこをめくっても、名前を言えば、病歴、術式、診断名をすべて覚えていらっしゃる先生がいました。

自分が経験した症例の画像を覚えていかないと経験値が全く上がっていかないと思います。それこそ、外科医がやった手術を次から忘れていったら腕が上がらないようにです。

同じ病気でも様々な画像所見を呈します。その様々な画像所見のぶれを記憶し、自分の中でデータベースを作っていくことによって、単純に言葉では言い表せないような所見をとらえ、まさに職人芸と言われるような画像診断ができていくものと考えます。

これは多くの画像を見ることによって地道にレベルアップしていくしかないことなので、この画像をたくさん見るという事こそが他科に対しての唯一であり、また最大の優位点であると思われます。

もちろん、単純にたくさん見ればいいと言ってるのではありません。漫然と何の記憶にも残さず、ただ流れるように画像見ているのであれば、見ていないのと同じです。なので、たくさん見ているからといって優秀な画像診断医とは言い切れないとは思います。

しかし、画像の数を十分に見ていない医師がすばらしい画像診断医師になることはあり得ないと思います。数学のように考えれば分かることではないので、経験しなきゃ分からないと思います。日々の症例を経験値に変換していける者だけが真の放射線科医になりうると考えます。