カテゴリー別アーカイブ: 遠隔画像診断

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遠隔画像診断した疾患;珪肺(Silicosis)

基本事項

  • 珪石のほこりを吸入し、肺の組織に炎症を生じ瘢痕を残すことによって引き起こされた呼吸器疾患。
  • 職業:サンドブラスト、採石場、採掘、ガラス吹き、製陶
  • シリカは最も頻度の高い元素であるため、あらゆる地殻に存在している
  • 一般的に結核のriskは上昇する

分類

  • 単純性塵肺症:1cm未満の微小結節、上肺野に多い。肺門/縦隔リンパ節腫大。卵殻状石灰化
  • 複雑性塵肺症:進行性塊状線維症を形成、空洞を作ることがある。
  • 急性シリカ蛋白症:肺胞蛋白症に類似
  • ※Caplan症候群:炭坑夫塵肺+関節リウマチ+壊死性小結節

画像所見

一般的特徴

  • 上肺野優位
  • 気管支血管束・強膜下に沿って小結節が分布する
  • 暴露後10-20年後に所見が見られる。

単純性塵肺症

  • 1-3mmの小結節
  • 小結節が石灰化することがある
  • 肺門・縦隔のリンパ節腫大。卵殻状石灰化

複雑性塵肺症

  • 小結節は、PMF( Progressive massive fibrosis )へと集簇する
  • 無定形の石灰化を有する場合や、空洞を形成する場合もある。
  • PMFの抹消は気腫状になる:気胸のRiskがある

急性シリカ蛋白症

  • air bronchogramを伴う蝶形陰影を示す肺蛋白症のパターン
  • 肺門縦隔リンパ節腫大
  • 数ヶ月かけて急速に進行
  • 後期に繊維化、構造改変、ブラ、気胸が生じる

肺の病変分布はリンパ流に依存する分布

  • リンパ流は呼吸のダイナミックスに影響を受けるが、最も重要な駆動力は肺動脈圧である。
  • 下肺野>>上肺野
  • 気道から進入してきた病原体や粒子
  •     ①気道粘膜の線毛運動によって喀出
  •     ②マクロファージに貪食されてリンパ系にはいり排出

Progressive massive fibrosis

珪石のほこりを吸入し、肺の組織に炎症を生じ瘢痕を残す

気管支血管束・強膜下に沿って小結節が分布する。

小結節は集簇し早期の進行性塊状線維症を形成する。

GradeⅠ PMF最大径>1.5cm <5cm
GradeⅡ PMF最大径≧5cm <10cm
GradeⅢ PMF最大径>10cm

鑑別診断

  • サルコイドーシス:職業性被爆はなく、PMFの頻度は低い
  • 結核:小結節は集簇して腫瘤を形成することはなく、小結節の密度は低い
  • Langerhans細胞組織球症:胸膜下に小結節を呈する頻度は低く、PMFはなく、膿疱を生じる。
  • 過敏性肺臓炎:胸膜下に小結節を呈する頻度は低く、PMFはなく、主として中肺野に見られる。

Multiple Pulmonary Calcifications

  • 感染   1.Histoplasmosis  2.結核 3.水痘
  • 塵肺   1.Silicosis
  • その他  1.Hypercalcemia 2.Mitral stenosis 3.Alveolar microlithiasis

症状

  • 単純性珪肺では寿命は標準的
  • 複雑性のPMFでは、呼吸不全・気胸・悪性腫瘍・結核により死亡をきたす
  • シリカ蛋白症:2-3年以内に死亡
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遠隔画像診断した疾患;硬化性腸骨骨炎(Osteitis condensans ilii)

  • 単純X-pにおいて腸骨に局所的な効果像を見ることがある。通常、仙腸関節に隣接して下方のおよび中間部分を含む。
  • Barsony and Polgar が 1928に報告している。”sclerosing bone disease, easily demonstrable by x-ray and confined to the os ilii“
  • 硬化性腸骨炎は、男性より女性で見つかる良好な状態である。
  • 基本的に放射線学的診断である。
  • 原因として最も有力な仮説は、①恥骨結合の不安定性による仙腸関節のストレス。②妊娠によって脈管質を増加させた。
  • 臨床的所見は通常穏やかである。
  • 腰または殿部痛を呈している患者のイメージングの際発見される。
  • 炎症性の関節所見が通常、存在しないにもかかわらず、朝のこわばり、運動制限と多発性関節痛が起こる可能性もある。

画像所見

  • 関節裂隙は保たれている
  • Erosions はない。
  • 骨硬化像はX-pでは三角形状
  • Osteophyteの形成はない。

鑑別診断

  • 血清陰性脊椎関節症
  • 硬化性腸骨骨炎
  • 腎性骨ジストロフィー
  • 原発性上皮小体機能亢進
  • パジェット病
  • 骨転移
  • リンパ腫
  • 変形性関節症
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遠隔画像診断した疾患;膀胱破裂(rupture of urinary bladder)

外傷性膀胱破裂

-膀胱挫傷(膀胱壁のみにとどまった場合)

-膀胱破裂(全層に断裂が生じた場合)

  1. 腹膜内膀胱破裂:穿孔して腹腔内と交通した場合(膀胱頂部~後壁部分)。最も脆弱で、外力の影響を受けやすい膀胱頂部の破裂が最も多い。原因として腹腔内手術による医原性のものと尿で膀胱が膨張しているときに下腹部の外傷由来のものが考えられる。
  2. 腹膜外膀胱破裂:膀胱周囲で、腹腔外と交通した場合(膀胱側壁、前壁、三角部)。骨盤骨折と合併することが多い(75~80%) 。損傷部位は骨折部の近く膀胱頸部に多い。
  3. 腹膜内外膀胱破裂:①と②が合併した場合

自然膀胱破裂

  • 外力と思えない軽微な外力でも起こる。
  • 一般的に腹膜内破裂となる。
  • 発生率 1:126000
  • 死亡率 47% :due to chemical peritonitis and a bacterial peritonitis
  • 79%の症例が男性.
  • 膀胱の疾患(膀胱癌など)や膀胱壁が脆弱な高齢者に神経因性膀胱や前立腺肥大症の合併例または、多量の飲酒でも起こりうる。

血性尿素窒素、血清クレアチニン高値

  • 腹腔内膀胱破裂のため尿が腹腔内に貯留し、腹膜に分布する毛細血管を介して拡散・濾過・透析液ー血管内浸透圧較差にて尿毒素(Cre,K)が血管内に再吸収されている(逆腹膜透析) 。

BASAVARAJ, K.K. .J.R.Coll.Surg.Edinb., 46, October 2001, 316-317

A diagnosis of spontaneous perforation of the bladder should be considered in patients presenting with an acute abdomen in a relatively stable condition and blood biochemistry showing a disproportionately elevated urea and creatinine

Hematuria and an elevated level of blood urea nitrogen may help to diagnose a rupture of the urinary bladder in laboratory examinations.

腹腔内液貯留のdensity

  • 単純腹水、腸液:0~30HU
  • 乳糜腹水、尿:0HU
  • Biloma(血液を含まない,感染していない):20HU以下
  • 血液: 30~45HU(凝血塊は50以上)

Gore RM, Gore MD. Ascites and Peritoneal Fluid Collections.In:Textbook of Gastrointestinal Radiology.2nd Ed,W.B.Saunders,Philadelphia.1969-1979, 2000.

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遠隔画像診断した疾患;浸透圧性髄鞘崩壊症(osmotic myelinolysis;OM)

  • 好発年齢、性差はない。
  • 低Na血症の急速補正により、Osmotic Myelinolysis(OM)が発症することは広く知られている。
  • Central Pontine Myelinolysis(CPM):橋中心に病変を認めるもの。
  • Extrapontine Myelinolysis(EPM):それ以外の部位に病変を認めるもの。
  • 病変はCTでは等から低吸収域、MRIではT1WIで低信号域、T2WI、FLAIRで高信号域を左右対称性に認める。
  • OMは電解質異常、慢性アルコール中毒、栄養不良等、慢性的な衰弱状態などでみられる脱髄性疾患である。
  • 多くは低Na血症の急速補正により発生するが、その背景に、低栄養や糖尿病、慢性腎不全、肝不全などを有する。

発生機序

発生機序については種々の説があり、

  1. 低Na血症に伴う浮腫による圧迫により脱髄が起こるとする説
  2. 浸透圧負荷による血管内皮細胞の障害とそれに引き続き起こる髄鞘障害因子の放出、並びに血液脳関門での血管透過性亢進による浮腫が原因とする説
  3. 灰白質が周囲のOligodendroglial Cellから栄養分を奪い、その結果、脱髄が起こるとする説が考えられている
  • OMの好発部位は橋、大脳基底核、視床、外包、尾状核、中脳、灰白質白質移行部である。
  • 病理学的には灰白質の中を細い束、ないし単独で走行する有髄線維の髄鞘が選択的に侵され、神経細胞、軸索、小血管は比較的保たれる。
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遠隔画像診断した疾患;後腹膜線維症(Retroperitoneal Fibrosis:RPF)

  • Albarran(1905)が最初に後腹膜線維化症(RPF)を報告し、,Ormond(1948)によって疾患概念が確立された。
  • 後腹膜線維症は、通常腹大動脈と尿管を含む非常にまれな状態である。
  • 症例の2/3:特発性
  • 1/3薬剤投与、感染症または全身病と腫瘍(約8-10%)
  • 頻度 1/200000
  • 死亡率 原因による
  • 性差 女性:男性 3:1(性差は悪性のRPFにみられない。)
  • 好発年齢 7-85(平均50歳前後)歳
  • 突発性の原因として考えられているものは
  • 動脈壁のplaqueから動脈壁外に漏れたceroidと呼ばれているinsoluble lipidに対する自己免疫反応であると考えられている。
  • The most common neoplasm is colorectal adenocarcinoma.
  • Gastric tumor locations are anecdotal, with only 6 cases reported to date.
  • At present it is not known whether retroperitoneal fibrosis in the context of neoplastic disease is due to a reactive inflammatory phenomenon, or whether it represents locoregional spread of the tumor itself.

原因

  • Drugs:Methysergide, pergolide, bromocriptine, ergotamine, methyldopa, hydralazine, analgesics, β-blockers
  • Malignant diseases:Carcinoid, Hodgkin’s and non-Hodgkin’s lymphomas, sarcomas, carcinomas of the colon, prostate, breast, stomach
  • Infections:Tuberculosis, histoplasmosis, actinomycosis
  • Radiotherapy:Testicular seminoma, colon carcinoma, pancreatic carcinoma
  • Surgery:Lymphadenectomy, colectomy, hysterectomy, aortic aneurysmectomy
  • Others

US

  • 辺縁が明瞭なlow echoic mass
  • 仙骨岬角を越えた分布と、分葉性が見られないことは良性を示唆する
  • カラードプラ超音波検査法によって両悪性の鑑別が試みられたが、最近の知見では鑑別は不可能

CT

  • 大動脈、静脈周囲の軟部組織として認められる。
  • 腸腰筋との間の脂肪織は失われる。
  • 大動脈を腹側にdisplaceさせることは少ない。
  • 腸間膜リンパ節腫大と大動脈のdisplaceは何らかの悪性疾患を疑わせる
  • 尿管を取り囲み閉塞症状を惹き起こす。
  • 大部分の腹膜後腫瘍は、横に尿管を移動させる。
  • 局所骨破壊をもたらさない。
  • 良悪性の鑑別は困難

鑑別診断

nmetastatic malignancy, lymphoma, periaortic hematoma, and amyloidosis.

MRI

  • T1強調像:低信号、T2強調像:様々な信号。
  • 活動性が高いときはT2強調像で高信号(これにより、治療効果の判定が出来る)

核医学

  • ガリウムシンチで良性RPFの活動期と悪性RPFで集積が増加する
  • FDG-PETでは、良性RPFは低い取り込みを示すが、悪性RPFは高い集積を示す

確定診断 biopsy

尿路の通過障害に対しては、腎瘻、もしくはdouble J stentの挿入が選択される

RPFに対するステロイド有効性は確立されていない

一部の報告ではステロイドが手術の際に尿管剥離を容易にすると報告している。

免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロホスファミド、タモキシフェン)が用いられることがある

薬物関連のRPFでは、原因薬剤の中止が症状を改善させる事がある。