- 脊椎(背骨)や仙腸関節(仙椎と骨盤との間にある関節)、股関節や肩の関節などに炎症(痛みや腫れなど)が起こるいくつかの病気をまとめて脊椎関節炎とよばれ、強直性脊椎炎はその中の代表的な病気。
- ヒト白血球抗原であるHLAのうち、ある特定の遺伝子型(HLA-B27)をもつ人が多い。
- 脊椎、仙腸関節、股関節、 肩関節などの大関節の他、付着部病変もみられる。
疫学・頻度
- 人種差あり。ドイツでは成人の1%に発病。一般的に白人では0.5%、日本人ではその10分の1以下
- 日本人ではHLA-B27をもつ人は少ない
- 中国・韓国人には日本人と比較してHLA-B27をもつ人が多い
男女比・発症年齢
- 発病の年齢は10歳から35歳と思春期、青年期に多く、45歳以上で発病することは希
- 男性に多い
病因
- 現在のところ原因不明
- HLA-B27との関連性が以前より注目
遺伝
- HLA遺伝子は、両親とも陽性の場合は100%、片親が陽性の場合は50%の確率でこどもに引き継がれる。
- しかし、HLA-B27陽性でも多くの場合(80%以上)、発病することはないので、親がHLA-B27をもち強直性脊椎炎があったとしても、脊椎関節炎を疑わない限りこどもがHLA-B27をもっているかどうかを検査する必要はない。
症状
- 腰椎や仙腸関節(腰の下方にある)が侵される。
- 適度な運動をすると痛みが楽になり、動かさないでいると悪くなるのが特徴で、夜間や朝方に強い痛みが起こる。
- 症状に波があるのも特徴。
- 脊椎が硬く動かなくなりますが、骨自体は骨粗鬆症によりもろくなる。
- 眼の急性の炎症(虹彩炎)が3分の1程度。
- 全身的には、初期には体重減少、疲労感、発熱、貧血。
- 重大な骨外合併症として、心ブロックと大動脈閉鎖不全症などがあり、失神を起こすこともあるので注意が必要である。
診断・所見
- 臨床的な診断には改訂NewYork基準(1984年)が用いられるが、 単純X線写真上の股関節の変化によっているので、早期診断は困難。
- 脊椎病変は胸腰椎あるいは腰仙椎移行部よりはじまることが多く,病気の進行とともに全脊椎に広がっていく。
- 最初に起きる椎体病変の単純X線所見は、 椎体辺縁のerosionによる欠損像でRomanus lesionといわれる。その周囲には硬化性変化を伴っており、 shiny cornerといわれる。これらの変化が進行すると椎体全体が四角にみえるようになり、squaringといわれる。
- MRIではRomanus lesionよりも早期に活動性のenthesitisを指摘できると報告されており、椎体隅角にT1強調像で低信号、 T2強調像で高信号、造影後増強効果を示す。
- 靭帯組織の骨化がsyndesmophyteといわれる。このような病変が両側対称性に多部位に連続して進展すると竹のような形態となり, bamboo spineとなる。
- その他、破壊性の病変が椎体終板付近に形成されることもあり、限局性に終板が侵されればSchmorl結節。びまん性の破壊により輪郭が不整になり、不明瞭化すれAnderson病変と呼ばれる。
- 強直性脊椎炎では仙腸関節炎が必発であり、CTでは単純写真では指摘できない仙腸関節炎による微小なerosionや硬化性変化を捉えることができる。MRIでは活動性炎症が存在すると、仙腸関節周囲にbonemarrow edema patternの信号変化を示す。
periosteal new bone formation:骨膜の浮腫により生ずる病変。RAではまれであり、脊椎関節炎(乾癬性性関節炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎など)に見られる所見。
腸腰靭帯、仙結節靭帯の骨化:健常人においても見られるが,強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis)節炎(reactivearthritis, Reiter症候群)やびまん性特発性骨増殖症(diffuseidiopathic skeletal hyperostosis ;DISH)にみられることもあり、指摘しておくのが望ましい。
足底腱膜の付着部の棘状変化:慢性の足底腱膜炎、強直性脊椎炎の付着部変化の可能性